電子回路学I

科目基礎情報

学校 熊本高等専門学校 開講年度 平成30年度 (2018年度)
授業科目 電子回路学I
科目番号 TE1304 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 情報通信エレクトロニクス工学科 対象学年 3
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 押山保常,相川孝作,他著「改訂電子回路」コロナ社
担当教員 大田 一郎

到達目標

この科目で次の事柄ができるように授業を行っていく.
①ダイオード,トランジスタ,FETの動作をキャリア(電子と正孔)の動きで説明できる.
②トランジスタおよびFETの各接地回路の直流回路を理解し,電源や電流の向きを判断できる.
③トランジスタおよびFETを用いた増幅回路を等価回路に直し,動作量を計算できる.
④演算増幅器を用いた回路をナレータ,ノレータモデルで解析できる.

ルーブリック

評価項目理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1ダイオード,トランジスタ,FETの基本動作ダイオード,トランジスタ,FETの動作をキャリア(電子と正孔)の動きで完全に説明できる.ダイオード,トランジスタ,FETの動作をキャリア(電子と正孔)の動きである程度説明できる.ダイオード,トランジスタ,FETの動作をキャリア(電子と正孔)の動きで殆ど説明できない.
評価項目2トランジスタおよびFETのバイアス回路トランジスタおよびFETの各接地回路の直流回路を完全に理解し,電源や電流の向きを正確に判断できる.トランジスタおよびFETの各接地回路の直流回路をある程度理解し,電源や電流の向きを判断できる.トランジスタおよびFETの各接地回路の直流回路を理解することが難しく,電源や電流の向きを判断できない.
評価項目3トランジスタおよびFETを用いた増幅回路の等価回路と動作量の計算トランジスタおよびFETを用いた全ての増幅回路について,等価回路を描いて,全ての動作量を正確に計算できる.トランジスタおよびFETを用いた幾つかの増幅回路については,等価回路を描いて,動作量を計算できる.トランジスタおよびFETを用いた殆どの増幅回路について,等価回路を描けなく,動作量を計算できない.
評価項目4演算増幅器を用いた加減算回路,積分回路,微分回路のナレータ・ノレータモデルによる解析演算増幅器を用いた加減算回路,積分回路,微分回路の全てについて,ナレータ,ノレータモデルを用いて正確に解析できる.演算増幅器を用いた加減算回路,積分回路,微分回路の幾つかについて,ナレータ,ノレータモデルを用いて解析できる.演算増幅器を用いた加減算回路,積分回路,微分回路の全てについて,ナレータ,ノレータモデルを用いて解析できない.

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
電子回路学IとⅡは3年次~4年次を通して電子回路の基本的動作と解析に関することを修得する.3年次では,電子回路の基礎となるトランジスタとFETの動作を中心に理解し,これらを用いた増幅器を等価回路に直し,動作量を解析的に求める技法を修得する.また,演算増幅器を用いた回路の動作を理解し解析する.回路をブラックボックスで考えるのではなく,原理からどのようにして動作しているのかに重点を置く.
授業の進め方・方法:
本科目の授業形態は反転授業である.学生は講義前日までにストリーミングサーバーの講義動画を聴講し講義ノートを作る.講義中は演習問題をひたすら解き,指名された学生が回答を板書し説明する.その後,小テストを実施して講義を終わる.次の講義の最初に,採点した小テストを返却して解説する.講義は回路の動作をブラックボックスではなく,原理に基づいて動作を説明し,等価回路を描いて回路の特性を解析的に導出している.年4回の試験の他に,毎回の小テストで,学生の理解度を測っている.
注意点:
本科目は,第1級陸上無線技術士の国家試験との関連性が深い.関連する基礎科目は電気回路学,電子工学,電子計測である.また,次年度における電子回路Ⅱの基礎科目と位置付けられる.

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ガイダンス,能動素子,理想増幅器,シンボル 本授業の概要,学習の進め方,本科目の評価法などの理解できる.能動素子,理想増幅器,シンボル(記号の意味)理解できる.
2週 導体,半導体,絶縁体の構造,ダイオードの構造と特性 p形半導体とn形半導体,キャリアと空乏層について説明できる.ダイオードの構造,ダイオードの特性と等価回路動作を理解し説明できる.
3週 トランジスタの構造,ベース接地トランジスタのバイアスと動作,静特性 ベース接地トランジスタ,バイアス,動作,静特性を説明できる.
4週 トランジスタの定格 トランジスタの定格について説明できる.
5週 固定バイアス回路 固定バイアス回路について,動作を説明し,安定係数を導出できる.
6週 自己(電圧帰還)バイアス回路 自己(電圧帰還)バイアス回路について,動作を説明し,安定係数を導出できる.
7週 電流帰還バイアス回路 電流帰還バイアス回路について,動作を説明し,安定係数を導出できる.
8週 試験問題回答返却と解説,電流・電圧帰還バイアス回路,非線形素子による補償 電流帰還バイアス回路および非線形素子による補償の動作を説明できる.
2ndQ
9週 中間試験
10週 ベース接地回路のT形等価回路と逆π形等価回路 トランジスタの小信号等価回路を描いて,ベース接地回路のT形等価回路から逆π形等価回路へ変換できる.
11週 エミッタ接地回路のT形等価回路と逆π形等価回路 エミッタ接地回路のT形等価回路を描いて,逆π形等価回路へ変換できる.
12週 hパラメータとyパラメータ,エミッタ接地トランジスタのhパラメータ等価回路 簡単な回路図からhパラメータやyパラメータを導出できる.エミッタ接地トランジスタのhパラメータ等価回路を説明できる.
13週 トランジスタの高周波特性と等価回路,拡散容量と障壁容量 高周波でのベース接地流増幅度α,エミッタ接地電流増幅度β,拡散容量,障壁容量を説明できる.
14週 接合形FETとMOSFETの構造と静特性,回路記号 接合形FETとMOSFET(エンハンスメント,デプリション)の構造,動作,静特性を説明できる.また,各FETの回路記号を描ける.
15週 定期試験
16週 試験問題回答返却と解説,FETの直流(バイアス)回路,CMOS インバータの構造と特性 FETの直流(バイアス)回路を説明し,動作点を求められる.CMOS インバータの構造と特性を説明できる.
後期
3rdQ
1週 増幅器の分類,動作量,整合,有能利得,デシベル 増幅器の分類と動作量(Av, Ai, Zi, Zo)の定義,整合,有能利得,デシベルについて説明できる.
2週 Tパラメータによるトランジスタの動作量 Tパラメータによるトランジスタの等価回路を描いて動作量を導出できる.
3週 hパラメータによるトランジスタの動作量 各接地方式のトランジスタについてhieとhfeを用いた等価回路を描いて,動作量を導出できる.
4週 増幅器のひずみ,CR結合増幅器 増幅器のひずみについて説明できる.CR結合増幅器の回路動作を説明できる.
5週 CR結合増幅器(FET)の等価回路と中域,低域,高域周波数特性 CR結合増幅器(FET)の中域,低域,高域周波数の等価回路を導出し周波数特性を説明できる.
6週 RC結合増幅器の直流負荷線,交流負荷線,直流増幅器,オフセット電圧,ドリフト電圧,差動増幅器 RC結合増幅器の直流負荷線と交流負荷線を導出し利得を求められる.直流増幅器,オフセット電圧,ドリフト電圧,差動増幅器を説明できる.
7週 CR結合増幅器(Tr)の等価回路と中域,低域,高域周波数特性 CR結合増幅器(Tr)の中域,低域,高域周波数の等価回路を導出し周波数特性を説明できる.
8週 中間試験
4thQ
9週 試験問題回答返却と解説,差動増幅器の等価回路,同相利得,差動利得,CMRR 差動増幅器(トランジスタ,FET)の等価回路を描いて増幅度を導出できる.同相利得,差動利得,CMRRについて説明できる.
10週 帰還増幅器,利得の安定化,周波数特性の改善,歪みや雑音の軽減,入出力インピ-ダンスの変化,ナイキストの判定条件 帰還増幅器,利得の安定化,周波数特性の改善,歪みや雑音の軽減,入出力インピ-ダンスの変化,ナイキストの判定条件,帰還増幅器の分類について説明できる.
11週 帰還増幅器の実例解析(電流直列帰還,電圧並列帰還) トランジスタやFETの帰還増幅器の実例(電流直列帰還,電圧並列帰還)について等価回路を描いて,動作量を導出できる.
12週 ダーリントン接続,演算増幅器(オペアンプ),ナレータ・ノレータ ダーリントン接続の等価回路を描いて増幅度を導出できる.演算増幅器(オペアンプ)についてナレータ・ノレータモデルで動作を説明できる.スルーレートについて説明できる.
13週 反転増幅器,非反転増幅器,加減算回路 反転増幅器,非反転増幅器,加減算回路についてナレータ・ノレータの等価回路を用いて解析できる.
14週 積分器と微分器 演算増幅器を用いた積分器と微分器について,ナレータ・ノレータの等価回路を描いて増幅度を導出でき,その周波数特性を説明できる.
15週 定期試験
16週 試験問題回答返却と解説

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学電気・電子系分野電気回路オームの法則を説明し、電流・電圧・抵抗の計算ができる。3
キルヒホッフの法則を用いて、直流回路の計算ができる。3
合成抵抗や分圧・分流の考え方を用いて、直流回路の計算ができる。3
正弦波交流の特徴を説明し、周波数や位相などを計算できる。2
平均値と実効値を説明し、これらを計算できる。2
正弦波交流のフェーザ表示を説明できる。2
R、L、C素子における正弦波電圧と電流の関係を説明できる。3
瞬時値を用いて、交流回路の計算ができる。2
フェーザ表示を用いて、交流回路の計算ができる。2
インピーダンスとアドミタンスを説明し、これらを計算できる。3
キルヒホッフの法則を用いて、交流回路の計算ができる。3
合成インピーダンスや分圧・分流の考え方を用いて、交流回路の計算ができる。3
直列共振回路と並列共振回路の計算ができる。3
交流電力と力率を説明し、これらを計算できる。2
重ねの理を用いて、回路の計算ができる。3
網目電流法を用いて回路の計算ができる。2
節点電位法を用いて回路の計算ができる。2
テブナンの定理を回路の計算に用いることができる。3
電磁気コンデンサの直列接続、並列接続を説明し、その合成静電容量を計算できる。3
電子回路ダイオードの特徴を説明できる。4
バイポーラトランジスタの特徴と等価回路を説明できる。4
FETの特徴と等価回路を説明できる。4
利得、周波数帯域、入力・出力インピーダンス等の増幅回路の基礎事項を説明できる。4
トランジスタ増幅器のバイアス供給方法を説明できる。4
演算増幅器の特性を説明できる。4
演算増幅器を用いた基本的な回路の動作を説明できる。4
電子工学電子の電荷量や質量などの基本性質を説明できる。2
原子の構造を説明できる。2
真性半導体と不純物半導体を説明できる。2
pn接合の構造を理解し、エネルギーバンド図を用いてpn接合の電流―電圧特性を説明できる。2
バイポーラトランジスタの構造を理解し、エネルギーバンド図を用いてバイポーラトランジスタの静特性を説明できる。2
電界効果トランジスタの構造と動作を説明できる。3
情報系分野その他の学習内容オームの法則、キルヒホッフの法則を利用し、直流回路の計算を行うことができる。2
トランジスタなど、ディジタルシステムで利用される半導体素子の基本的な特徴について説明できる。1
分野別の工学実験・実習能力電気・電子系分野【実験・実習能力】電気・電子系【実験実習】増幅回路等(トランジスタ、オペアンプ)の動作に関する実験結果を考察できる。3
ダイオードの電気的特性の測定法を習得し、その実験結果を考察できる。3
トランジスタの電気的特性の測定法を習得し、その実験結果を考察できる。3

評価割合

試験小テスト事前学習ノート合計
総合評価割合702010100
基礎的能力4010555
専門的能力205530
分野横断的能力105015