電子回路学II

科目基礎情報

学校 熊本高等専門学校 開講年度 2019
授業科目 電子回路学II
科目番号 TE1406 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 情報通信エレクトロニクス工学科 対象学年 4
開設期 通年 週時間数 1
教科書/教材 押山保常,相川孝作,他著「改訂電子回路」コロナ社
担当教員 大田 一郎

到達目標

この科目で次の事柄ができるように授業を行っていく.
①ダイオード,トランジスタ,およびFETを用いた比較的簡単な回路図を読むことができる.
②トランジスタやFETの等価回路を用いて,回路の動作量や発振条件を導出できる.
③ダイオード,トランジスタ,およびFETのスイッチング動作を理解して,簡単なパルス回路の動作を説明できる.
④電源回路の種類と動作の違いを理解し,特性を説明できる.

ルーブリック

評価項目理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1ダイオード,トランジスタ,およびFETを用いた比較的簡単な回路の動作ダイオード,トランジスタ,およびFETを用いた比較的簡単な殆どの回路図について,回路動作を完全に説明できる.ダイオード,トランジスタ,およびFETを用いた比較的簡単な幾つかの回路図について,回路動作をある程度説明できる.ダイオード,トランジスタ,およびFETを用いた比較的簡単な殆どの回路図について,回路動作を説明できない.
評価項目2トランジスタやFETの等価回路を用いた回路の動作量や発振条件の導出トランジスタやFETを用いた殆どの増幅器や発振器について,等価回路を描いて,回路の動作量や発振条件を正確に導出できる.トランジスタやFETを用いた幾つかの増幅器や発振器について,等価回路を描いて,回路の動作量や発振条件を導出できる.トランジスタやFETを用いた殆どの増幅器や発振器について,等価回路を描いて,回路の動作量や発振条件を導出できない.
評価項目3ダイオード,トランジスタ,およびFETのスイッチング動作の理解と簡単なパルス回路の動作説明ダイオード,トランジスタ,およびFETのスイッチング動作を完全に理解して,簡単なパルス回路の動作を正確に説明できる.ダイオード,トランジスタ,およびFETのスイッチング動作をある程度理解して,簡単なパルス回路の動作を説明できる.ダイオード,トランジスタ,およびFETのスイッチング動作を理解することが難しく,簡単なパルス回路の動作を説明できない.
評価項目4電源回路の種類と動作の違いの理解および特性の違いの説明電源回路の種類と動作の違いを正確に理解し,特性の違いについて的確に説明できる.電源回路の種類と動作の違いを理解し,特性の違いについてある程度説明できる.電源回路の種類と動作の違いを理解することが難しく,特性の違いについて説明できない.

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
3年次で学習したトランジスタとFETの動作を基にして,4年次では,その応用回路として電力増幅器,発振回路,パルス回路および電源回路を通して,トランジスタとFETの大振幅動作,小振幅動作およびスイッチング動作を修得する.回路をブラックボックスで考えるのではなく,原理からどのようにして動作しているのかに重点を置く.
授業の進め方・方法:
主に,板書を中心に回路図を描いて,回路の動作をブラックボックスではなく,原理に基づいて説明している.公式を暗記して代入することは意味がないので,等価回路を描いて回路の特性を解析的に導出している.年4回の試験の他に,年8回の小テスト(15分程度)を実施して,学生の理解度を測っている.また,年4回のレポートも課している.小テストやレポートに類似した問題を定期試験でも出題している.欠席した学生や授業だけで理解できなかった学生のために,過去の講義の動画2年分を閲覧できるようにしている.
注意点:
本科目は,第1級陸上無線技術士の国家試験との関連性が深く,能動素子の応用を学ぶ重要な科目である.この科目の講義内容について十分に復習して受講することが望まれる.専門用語は英語でも併記します.質問は授業中でも教員室でも随時受け付ける.
本科目は放課後・家庭で年間30時間程度の自学学習が課せられる.年4回のレポート作成と年8回の小テストおよび年4回の定期試験の勉強で自宅学習を確保している.

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ガイダンス,電力増幅器の種類と分類,注意する点,効率 本授業の概要,学習の進め方,本科目の評価法などの理解できる.電力増幅器の種類,動作点による分類,注意する点,効率について説明できる.
2週 A級増幅器の動作と効率 A級増幅器についてに動作を説明し,効率の式を導出できる.
3週 B級プッシュプル増幅器の動作と効率,クロスオーバー歪みと対策,SEPP回路 B級プッシュプル増幅器の動作を説明し,効率の式を導出できる.クロスオーバー歪みと対策,SEPP回路について説明できる.
4週 SEPP回路の変形,相補対称のSEPP回路,B級高周波増幅器の原理と効率の導出 SEPP回路の変形,相補対称のSEPP回路,B級高周波増幅器の動作を説明し,効率の式を導出できる.
5週 B級高周波増幅器の原理と効率の導出,C級電力増幅器の原理と効率 B級高周波増幅器の原理と効率の導出,C級電力増幅器の原理と効率について説明できる.
6週 インピ-ダンス変換増幅器(エミッタホロワ と ソースホロワ) インピ-ダンス変換増幅器(エミッタホロワ と ソースホロワ)の動作を説明し,動作量を導出できる.
7週 演算増幅器を用いた積分器と微分器,雑音指数,増幅器の雑音,トランジスタの雑音 演算増幅器を用いた積分器と微分器,雑音指数,増幅器の雑音,トランジスタの雑音について説明できる.
8週 発振回路,ループ利得とキルヒホッフによる発振条件,ナイキストの判定条件,発振が成長する過程 発振回路,ループ利得とキルヒホッフによる発振条件,ナイキストの判定条件,発振が成長する過程について説明できる.
2ndQ
9週 中間試験
10週 試験問題回答返却と解説,発振回路のキルヒホッフの法則による解法,RC発振器,移相発振器,並列(or直列)入力形移相発振器(進or遅相形) 発振回路のキルヒホッフの法則による解法,RC発振器,移相発振器,並列(or直列)入力形移相発振器(進or遅相形)の発振条件を等価回路を描いて導出できる.回路図から回路名を判断できる.
11週 ターマン発振器,ウィーンブリッジ発振器,RC発振器の実際 ターマン発振器,ウィーンブリッジ発振器の発振条件を等価回路を描いて導出できる.RC発振器の実際について説明できる.
12週 LC発振器,回路名の見分け方,コルピッツ発振器,ハートレー発振器 LC発振器,回路名の見分け方,コルピッツ発振器,ハートレー発振器の発振条件を等価回路を描いて導出できる.
13週 FET(Tr)発振器の発振条件,Tr (FET)三点接続発振器,バルクハウゼンの発振条件 FET(Tr)発振器の発振条件,Tr (FET)三点接続発振器,バルクハウゼンの発振条件について説明できる.
14週 LC発振器の周波数安定化,LC発振器の実際 LC発振器の周波数安定化とLC発振器の実際について波形を描いて動作を説明できる.
15週 定期試験
16週 試験問題回答返却と解説,水晶発振器,機械系と電気系の対応,水晶振動子のリアクタンスの周波数特性,二端子発振器の発振条件,負抵抗発振器,負コンダクタンス発振器 水晶発振器,機械系と電気系の対応,水晶振動子のリアクタンスの周波数特性,二端子発振器の発振条件,負抵抗発振器,負コンダクタンス発振器について説明できる.
後期
3rdQ
1週 ダイオードのパルス応答,トランジスタのパルス応答 ダイオードのパルス応答,トランジスタのパルス応答について波形を描いて動作を説明できる.
2週 マルチバイブレータの分類,無安定マルチバイブレータ(回路,動作,波形) マルチバイブレータの分類,無安定マルチバイブレータ(回路,動作,波形)について説明できる.
3週 単安定マルチバイブレータ(回路,動作,波形) 単安定マルチバイブレータ(回路,動作,波形)について波形を描いて動作を説明できる.
4週 双安定マルチバイブレータ(回路,動作,波形),スピードアップコンデンサ 双安定マルチバイブレータ(回路,動作,波形),スピードアップコンデンサについて波形を描いて動作を説明できる.
5週 波形整形回路,リミッタ,クリッパ,スライサ,クランパ 波形整形回路,リミッタ,クリッパ,スライサ,クランパについて波形を描いて動作を説明できる.
6週 ミラー積分器 ミラー積分器(理想回路の解析と増幅度A倍の解析での等価回路)について波形を描いて動作を説明できる.
7週 ブートストラップ回路,コンパレータ ブートストラップ回路,コンパレータについて波形を描いて動作を説明できる.
8週 中間試験
4thQ
9週 試験問題回答返却と解説,シュミット回路,単相半波整流回路,単相全波整流回路 シュミット回路,単相半波整流回路,単相全波整流回路について波形を描いて動作を説明できる.
10週 全波ブリッジ,倍電圧回路,コッククロフトウォルトン回路 全波ブリッジ,倍電圧回路,コッククロフトウォルトン回路について波形を描いて動作を説明できる.
11週 多相整流回路(Max,Min回路),三相整流回路のトランスの結線方法 多相整流回路(Max,Min回路),三相整流回路について波形を描いて動作を説明でき,トランスの結線方法が描ける.
12週 三相半波・全波整流回路,平滑回路(コンデンサ入力形),リプルとスパイク電圧,なぜ送電線の電圧は高い? 三相半波・全波整流回路,平滑回路(コンデンサ入力形),リプルとスパイク電圧について波形を描いて動作を説明できる.なぜ送電線の電圧は高いか図と式で説明できる.
13週 チョーク入力形平滑回路,CとLの機械的モデル,整流器の逆電圧,整流効率,電圧変動率,電力変換効率 チョーク入力形平滑回路,CとLの機械的モデル,整流器の逆電圧,整流効率,電圧変動率,電力変換効率について図と式を用いて説明できる.
14週 電圧安定化回路(ドロッパ形電源),電源の安定指数や出力抵抗,効率が低いとなぜ小形化できないか?,ICのパスコン 電圧安定化回路(ドロッパ形電源),電源の安定指数や出力抵抗について説明できる.効率が低いとなぜ小形化できないか図と式で説明できる.ICのパスコンについて波形を描いて動作を説明できる.
15週 定期試験
16週 試験問題回答返却と解説

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学電気・電子系分野電気回路オームの法則を説明し、電流・電圧・抵抗の計算ができる。3
キルヒホッフの法則を用いて、直流回路の計算ができる。3
合成抵抗や分圧・分流の考え方を用いて、直流回路の計算ができる。3
ブリッジ回路を計算し、平衡条件を求められる。3
電力量と電力を説明し、これらを計算できる。2
正弦波交流の特徴を説明し、周波数や位相などを計算できる。2
平均値と実効値を説明し、これらを計算できる。2
正弦波交流のフェーザ表示を説明できる。2
R、L、C素子における正弦波電圧と電流の関係を説明できる。2
瞬時値を用いて、交流回路の計算ができる。2
フェーザ表示を用いて、交流回路の計算ができる。2
インピーダンスとアドミタンスを説明し、これらを計算できる。3
キルヒホッフの法則を用いて、交流回路の計算ができる。3
合成インピーダンスや分圧・分流の考え方を用いて、交流回路の計算ができる。3
直列共振回路と並列共振回路の計算ができる。3
相互誘導を説明し、相互誘導回路の計算ができる。3
理想変成器を説明できる。3
交流電力と力率を説明し、これらを計算できる。2
RL直列回路やRC直列回路等の単エネルギー回路の直流応答を計算し、過渡応答の特徴を説明できる。3
RLC直列回路等の複エネルギー回路の直流応答を計算し、過渡応答の特徴を説明できる。3
重ねの理を用いて、回路の計算ができる。4
網目電流法を用いて回路の計算ができる。4
節点電位法を用いて回路の計算ができる。4
テブナンの定理を回路の計算に用いることができる。4
電磁気コンデンサの直列接続、並列接続を説明し、その合成静電容量を計算できる。3
電子回路ダイオードの特徴を説明できる。4
バイポーラトランジスタの特徴と等価回路を説明できる。4
FETの特徴と等価回路を説明できる。4
利得、周波数帯域、入力・出力インピーダンス等の増幅回路の基礎事項を説明できる。4
トランジスタ増幅器のバイアス供給方法を説明できる。3
演算増幅器の特性を説明できる。4
演算増幅器を用いた基本的な回路の動作を説明できる。4
発振回路の特性、動作原理を説明できる。4
電子工学pn接合の構造を理解し、エネルギーバンド図を用いてpn接合の電流―電圧特性を説明できる。2
バイポーラトランジスタの構造を理解し、エネルギーバンド図を用いてバイポーラトランジスタの静特性を説明できる。2
電界効果トランジスタの構造と動作を説明できる。2
電力三相交流における電圧・電流(相電圧、線間電圧、線電流)を説明できる。2
変圧器の原理、構造、特性を説明でき、その等価回路を説明できる。2

評価割合

試験小テストレポート合計
総合評価割合702010100
基礎的能力4010353
専門的能力205328
分野横断的能力105419