電磁波工学

科目基礎情報

学校 熊本高等専門学校 開講年度 平成30年度 (2018年度)
授業科目 電磁波工学
科目番号 TE503 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 情報通信エレクトロニクス工学科 対象学年 5
開設期 通年 週時間数 1
教科書/教材 松田、宮田、南部共著「電波工学」コロナ社
担当教員 松田 豊稔

到達目標

電波とともに伝送線路やアンテナなど高周波素子に関する基本的な考え方を修得している:
1. 分布定数理論から伝送線路上の電圧と電流を導出し,伝送線路の基本特性及び整合回路を理解できる.
2. 電波を平面波として数式表現し,真空・誘電体・金属など各種媒質中の平面波が伝搬する様子を説明できる.
3. アンテナによる電波の放射や受信の仕組みを理解し,利得や実効長等のアンテナの性能を表す諸量を計算することができる.
4. 実際に用いられている代表的なアンテナについて文献等でその動作機構や放射特性,それから利得や指向性などアンテナ諸量の測定法を調べることができる.
5. 電波が空中や伝送路を伝わる様子や特性を理解し,電波の各種伝搬様式を説明できる.

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
伝送線路の基礎電信方程式を導き,その解として電圧と電流を求め,伝送線路における電圧と電流の伝搬特性(分布定数理論)を理解できる.  また,伝送特性を示す諸量(波長,速度,伝搬定数,特性インピーダンス,反射係数など)の物理的意味を理解し,線路の特性評価や設計に利用することができる.伝送線路の電圧と電流を波動として理解し,集中定数線路との違いを定性的に説明できる.  そして,与えられた条件から伝送特性を示す諸量(波長,速度,伝搬定数,特性インピーダンス,反射係数など)を計算して,線路の伝搬特性を定量的に説明できる.分布定数理論,つまり伝送線路の電圧と電流を波動として理解することができない.  伝送特性を示す諸量(波長,速度,伝搬定数,特性インピーダンス,反射係数など)の式が与えられても,その物理的意味が分からず,伝送特性の評価に利用することができない.
電磁波の基礎 Maxwellの方程式から波動方程式を導き,その解として平面波の数式表現を導くことができる.そして,平面波の数式表現から電波の伝搬に関する基本的性質(媒質定数,波長,速度,偏波,ポインチング電力)を定量的に説明できる.  また,各種媒質(真空,誘電体,導体,完全導体)中での平面波の伝搬特性(の違い)を理解できる.電波を電磁波つまり電界と磁界の振動を伴う波動として理解し,平面波の数式表現から,電波の伝搬に関する基本的性質(媒質定数,波長,速度,偏波,ポインチング電力)の意味を説明することができる.  また,各種媒質(真空,誘電体,導体,完全導体)における平面波の伝搬特性(の違い)を定性的に説明できる.電磁波(電波)を電界と磁界の振動を伴う波動として理解できない.また,電波の伝搬に関する基本的性質(媒質定数,波長,速度,偏波,ポインチング電力)の数式表現が与えられても,その伝搬特性の評価に利用できない.各種媒質(真空,誘電体,導体,完全導体)の媒質定数による違いを理解していない.
給電線と整合回路平行2線式線路及び同軸線路の伝送特性を電圧電流とともに電波の伝搬から説明することができる.また,整合回路の働きを理解し,集中定数整合回路やバランの仕組みを説明できる.導波管における電波の伝送特性を定量的に説明できる.平行2線式線路及び同軸線路の伝送特性を電圧と電流の伝搬から説明できる.また,整合回路の働きを知り,集中定数整合回路における整合条件を導くことができる.また,導波管の構造を説明できる.平行2線式線路及び同軸線路の伝搬特性として特性インピーダンス及び速度)を説明することができない.集中定数整合回路における整合条件を導くことができない.
アンテナの基礎線状アンテナ上での電流分布を理解し,各種線状アンテナからの電波放射を理解できる.  実効長や利得などアンテナの特性や性能を表す諸量について,その量を定義する必要性を理解し,アンテナの特性評価をすることができる.ダイポールアンテナからの電波放射を理解し,その応用として半波長アンテナやλ/4垂直接地アンテナの電波放射を説明できる.  実効長や利得などアンテナの特性や性能を表す諸量を与えられたパラメータから計算できる.ダイポールアンテナや半波長アンテナなど基本的な線状アンテナからの電波放射の仕組みを説明することができない.  実効長や利得などアンテナの特性や性能を表す諸量の数式表現が与えられても,アンテナの特性評価に利用することができない.
アンテナの実際と高周波計測代表的なアンテナの動作機構や放射特性を自ら調べることができる.また,各種アンテナの分類を通して,アンテナの特性を俯瞰的に把握できる.  アンテナの利得や指向性パターンの計測法を通して,高周波計測の独自性を理解できる.授業で取り上げるアンテナに対してその動作機構や放射特性を説明できる.また,アンテナの動作機構や放射特性からアンテナが分類されることを説明できる.  アンテナの利得や指向性パターンの計測など高周波計測の具体例に関する知識がある.授業で取り上げるアンテナに対してその動作機構や放射特性を説明できない.また,アンテナの動作機構や放射特性による分類が理解できない. 伝送線路やアンテナの特性(利得や指向性パターン)など,高周波計測の独自性が理解できない.
無線通信システムと電波伝搬無線通信の基本的なシステム構成を説明できる.電波の各種伝搬様式を理解し,電波伝搬への応用を説明できる.無線通信の基本的なシステム構成例の説明ができる.電波の各種伝搬様式の違いを説明できる.電波の各種伝搬様式(フリスの伝搬公式,地上波伝搬,対流圏伝搬,電離層伝搬)が理解できてない.

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
電波を利用した機器やサービスで用いられている電波の性質やその利用技術の考え方には共通しているものが多く,これらはいくつかの基本的なものに集約される.本教科は,この電波の利用技術において特に身に付けておくべき基本的な事項の習得を目的として,伝送線路の基礎・電磁波の基礎・給電線と整合回路・アンテナの基礎・アンテナの実際と高周波計測・電波伝搬について講義する.
授業の進め方・方法:
受講者が電波など電磁波やその利用技術に興味を持てるように,次の3点に留意して講義を行う:電磁波の数式による取扱いよりもその物理的性質を理解し,電磁波の利用技術に慣れる;実例に関連した演習問題を解いて理解を深める;図や写真及び実際の高周波素子を提示し,電磁波工学を身近なものとして捉えられるようにする.
評価は,前期中間,前期期末,後期中間,後期期末の四半期毎に評価し,その内訳は定期試験と課題(小テストを含む)がそれぞれ80%と20%である.四半期の評価の平均点をもって学年成績とし,学年成績が60%以上の得点率で目標達成とする.なお,課題の未提出や小テストを受験しなかった場合は,原則としてその評価は0点とする.
 本教科に関する自学自習のための課題や資料は,四半期毎に別途配布する(この四半期毎に配布する自学自習用の課題は,毎週の授業の復習として解いておくこと).
注意点:
本教科では、調査活動やレポート作成などで年間に30時間の自学自習を課す。自学自習のための課題や資料は,四半期毎に別途配布する(この四半期毎に配布する自学自習用の課題は,毎週の授業の復習として解いておくこと). 本教科は,無線従事者国家試験 第1級陸上特殊無線技士 の長期養成課程の認定科目である. また,本科目の学習内容は,無線従事者国家試験 第1,2級陸上無線技術士の無線工学Bの範囲である.

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ・ガイダンス
・電波と電磁波
・電磁波の定義を理解し,電波の周波数による分類ができる.
2週 ・伝送線路と分布定数線路
・線路上の電圧と電流
・伝送線路上の電圧と電流を分布定数理論に用いて定式化し,電信方程式を解いて電圧と電流を導出できる.
3週 ・伝搬定数(減衰定数と位相定数)
・特性インピーダンス
・伝送線路上の電圧と電流の伝搬定数(減衰定数と位相定数)の物理的意味が理解できる.
・特性インピーダンスの意味が理解できる.
4週 ・入射波と反射波
・伝送線路の電力
・伝送線路上の電圧と電流における入射波と反射波の数式表現ができる.
・伝送線路の電圧と電流から電力が計算できる.
5週 ・無損失線路の電圧と電流 ・無損失線路上の電圧と電流の表現式を理解し,境界条件を用いて電圧と電流を決定することができる.
6週 ・無損失線路のインピーダンス ・無損失線路のインピーダンスの意味を理解し,各種線路(整合線路,受端短絡,受端開放など)のインピーダンスからその伝送特性を説明できる.
7週 ・無損失線路における反射と定在波 ・無損失線路における電圧(または電流)の受端での反射により生じる定在波の分布を求めることができる.
8週 中間試験
2ndQ
9週 ・答案返却と解説
・電磁波の基本法則
・中間試験の解説
・構成方程式及びMaxwell の方程式から電磁量間の関係を説明することができる.
10週 ・Helmholtz波動方程式
・平面波の導出
・Helmholtz波動方程式から平面波の表現式を導き,平面波の伝搬の様子を説明できる。
11週 ・各種媒質中の平面波 ・各種媒質(真空,誘電体,金属,完全導体)中を平面波が伝搬する様子をその表現式から説明できる.
12週 ・各種伝送線路(TEM線路,TE/TM線路,ハイブリッド線路)
・平行2線式線路と同軸線路
・TEM線路の代表例として,平行2線式線路と同軸線路を電波が伝搬する様子を説明でき,(一次定数から)特性インピーダンスと伝搬速度を求めることができる.
13週 ・マイクロストリップ線路
・整合回路(1/4波長整合回路,集中定数整合回路)
・マイクロストリップ線路の構造及び特徴を説明できる.
・1/4波長整合回路と集中定数整合回路の整合条件を導くことができ,バランの働きを説明できる.
14週 ・導波管における電波伝搬
・代表的な導波管回路
・導波管の構造と基本モードによる電波伝送の様子を理解できる.
・導波管により構成される方向性結合器の動作原理を説明できる.
15週 定期試験
16週 ・答案返却と解説 ・定期試験の解説
・電波利用技術について調べ,課題としてまとめ報告する.
後期
3rdQ
1週 ・微小ダイポールからの電波の放射
・アンテナ諸量(放射電力,放射抵抗,指向性パターン,最大放射方向)
・微小ダイポールの構造を説明でき,微小ダイポールから放射される電波を理解できる.
・微小ダイポールの諸量(放射電力,放射抵抗,指向性パターン,最大放射方向)を求めることができる.
2週 ・半波長アンテナからの電波の放射
・半波長アンテナのアンテナ諸量
・微小ダイポールの放射から半波長アンテナの放射界を求める方法を説明できる.
・半波長アンテナの諸量(放射電力,放射抵抗,指向性パターン,最大放射方向)を求めることができる.
3週 ・λ/4垂直接地アンテナ
・アンテナの実効長と放射インピーダンス
・λ/4垂直接地アンテナの諸量(放射電力,放射抵抗,指向性パターン,最大放射方向)を求めることができる.
・アンテナの実効長と放射インピーダンスの意味が理解できる.
4週 ・アンテナの利得
・等方性アンテナ
・アンテナの利得(相対利得,絶対利得)の定義を理解し、代表的なアンテナの利得を求めることができる.
・等方性アンテナの最大放射方向電界強度とその利得を計算できる.
5週 ・受信アンテナ ・受信アンテナの等価回路から受信最大有効電力を求めることができる.
・実効面積と絶対利得の関係を説明することができる.
6週 ・フリスの伝達公式 ・フリスの伝達公式を導くことができる.
・自由空間にある送受信アンテナ間での基本伝送損と受信電力を計算できる.
7週 ・アンテナの配列 ・半波長アンテナの配列による指向性係数及び利得を計算できる.
8週 中間試験
4thQ
9週 ・答案返却と解説
・アンテナの実例(線条アンテナ)
・中間試験の解説
・中波ラジオ放送の送信アンテナとして垂直接地アンテナの特徴を説明できる.
・ループアンテナの構造と特性を説明できる.
10週 ・アンテナの実例(八木宇田アンテナ,対数周期アンテナ) ・八木宇田アンテナの構造と動作原理(反射器と導波器の働き)を説明できる.
・対数周期アンテナの構造と特徴を説明できる.
11週 ・アンテナの実例(平面アンテナ) ・スロットアンテナの構造と特徴を説明できる.
・マイクロストリップアンテナの構造と特徴を説明できる.
12週 ・アンテナの実例(開口面アンテナ,パラボラアンテナ) ・ホーンアンテナの構造を説明できる.
・パラボラアンテナの動作原理を理解し、説明することができる.
13週 ・アンテナの分類
・アンテナ利得の計測
・アンテナの指向性,偏波,周波数特性いより分類を知っている.
・アンテナ利得を標準アンテナの利得とし比較して求める測定法(置換法)とその利点を説明できる.
14週 ・電波伝搬とその概要 ・電波の伝搬経路による分類(地上波伝搬,対流圏伝搬,電離層伝搬)ができ,それぞれの伝搬様式を説明できる.
15週 定期試験
16週 ・答案返却と解説
・電波を用いた通信システム
・定期試験の解説
・無線通信システムの構成を理解し,例を用いて説明できる.

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学電気・電子系分野電気回路相互誘導を説明し、相互誘導回路の計算ができる。2
理想変成器を説明できる。2
電磁気電界、電位、電気力線、電束を説明でき、これらを用いた計算ができる。4
ガウスの法則を説明でき、電界の計算に用いることができる。3
導体の性質を説明でき、導体表面の電荷密度や電界などを計算できる。4
誘電体と分極及び電束密度を説明できる。4
静電エネルギーを説明できる。4
磁性体と磁化及び磁束密度を説明できる。4
電流が作る磁界をアンペールの法則を用いて計算できる。4
磁気エネルギーを説明できる。4
電磁誘導を説明でき、誘導起電力を計算できる。3

評価割合

試験課題合計
総合評価割合8020100
基礎的能力401050
専門的能力401050