到達目標
①正弦波交流と複素数との対応関係を理解し、複素インピーダンス、極座標表示を回路計算で活用できる。②相互インダクタンスを含む回路網の取り扱いについて理解し、交流回路計算に活用できる。③交流電力の考え方とその求め方について理解し、交流回路計算に活用できる。④相反定理をはじめとする重要な諸定理に関する理解を深め、相互間の関係性についての説明ができる。
ルーブリック
| 理想的な到達レベルの目安 | 標準的な到達レベルの目安 | 未到達レベルの目安 |
複素インピーダンスと極座標表示 | 複数の抵抗、リアクタンス素子から成る複雑な電気回路について、正弦波交流表示と複素数表示を用いた説明ができる。また、円線図について説明でき、周波数変化を考慮したフェーザ軌跡を描くことができる。 | RL/RC直並列回路に対して、正弦波交流表示と複素数表示を用いた計算ができる。また、これら回路について、電圧、電流、インピーダンス、アドミタンスについてフェーザ図を描くことができる。 | 正弦波表示、あるいは複素数表示を用いた計算ができない。また、電圧、電流、インピーダンス、アドミタンスについてフェーザ図を描くことができない。 |
交流回路における電力 | 交流回路の電力瞬時値、有効電力、無効電力、皮相電力を理解し、計算できる。また、複素電力表示の意味を理解したうえで、各種電力ならびに最大電力を計算できる。 | 正弦波交流表示ならびに複素数表示を用いて、有効電力と無効電力とについて説明ができる。また、それら電力を計算をすることができる。 | 交流電力の計算ができない。 |
相互誘導回路 | 相互誘導のあるコイルについて成り立つ基礎式から、変成器や理想変成器の等価回路を導いて説明することができ、さらにそれらの等価回路を用いて、結合回路を含む各種交流回路計算ができる。 | 相互誘導のあるコイルについて成り立つ基礎式やT形等価回路を用いて、変成器の入力インピーダンスや変成器を用いたブリッジ回路・位相推移回路などについて、交流回路計算ができる。 | 変成器を用いた回路の交流計算ができない。 |
回路の諸定理 | 重ねの理を理解したうえで、補償定理やテブナンの定理を証明して説明できる。また、逆回路や双対回路の概念を理解して説明できる。 | テブナンの定理、ノートンの定理、ミルマンの定理を用いて回路計算ができる。また、簡単な回路についての逆回路を求めることができる。 | 重ねの理やテブナンの定理を用いた回路計算ができない。 |
学科の到達目標項目との関係
教育方法等
概要:
基礎電気学Ⅱでの学習内容を踏まえて、さらに、一般線形回路網ならびにその解析に特有の概念についての理解を深めることを目指す。あわせて、回路解析に必要な各種手法の定着を図る。
授業の進め方・方法:
複素数を用いた表記方法について、その成り立ちや適用範囲について、複数の視点から説明する。ついで、比較的複雑な回路として相互インダクタンスを含む回路網の取り扱いについて説明する。さらに、交流電力の考え方とその求め方について説明する。最後に、相反定理をはじめとする重要な諸定理に関して説明する。一方で、これらの内容の定着を図るために、随時、アクティブラーニングの手法を取り入れた学習の場を設ける。
注意点:
規定授業時間数は60時間である。評価は、中間試験・期末試験等の筆記試験、平常テスト、レポートで行うが、平常テストは演習 レポート形式として実施する場合もある。演習レ ポートの提出期限は課題提示と同時に示し、期限に遅れて提出されたレポートの評価点は、遅延に応じて減点する。予習を行ったうえで講義に臨むことが重要であり、また、専門科目の基礎となる教科であるで、取り組みには十分な時間をかける必要がある。特に、年度初めの学習においては、事前に2年次での基礎電気学Ⅱの復習を十分に行ったうえでの受講が必要である。
授業計画
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
ガイダンス
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到達目標、評価法、学習方法・進め方などを理解する。
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2週 |
電圧源、電流源、回路方程式についての理解を深める |
定電圧源と定電流源の等価変換を理解して計算できる。直流回路において、回路方程式を立ててこの方程式を解くことができる。
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3週 |
正弦波交流についての理解を深める |
正弦波交流の瞬時値、位相について理解し、交流の和および差の計算を三角関数を用いてできる。
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4週 |
正弦波交流のフェーザ表示 |
正弦波交流の瞬時値及びフェーザ表現を理解し、フェーザを用いて電圧・電流を合成し、その大きさや位相を計算できる。
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5週 |
交流の大きさと波形 |
絶対平均値、実効値について理解し、各種波形についての計算ができる。
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6週 |
複素数による表示法の基礎 |
指数関数とオイラーの公式に関して理解し、計算をすることができる。
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7週 |
正弦波と複素数の対応 |
複素表示の諸性質について理解し、計算することができる。
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8週 |
問題演習 |
問題を解くことにより、正弦波交流、交流回路についての理解を深め、実践力を高める。
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2ndQ |
9週 |
前期中間試験 |
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10週 |
素子の電力とエネルギー |
交流回路における電力とエネルギーについての基本的関係について理解できる。
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11週 |
正弦波交流表示を用いた各種電力 |
交流回路の電力瞬時値、有効電力、皮相電力、 無効電力、を理解し、計算できる。
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12週 |
複素電力の基礎 |
正弦波交流表示を用いた各種電力と複素電力との関係について理解する。
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13週 |
複素電力表示による電力計算 |
複素電力表示により、各種電力を理解し、計算できる。
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14週 |
問題演習 |
問題を解くことにより、交流電力についての理解を深め、実践力を高める。
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15週 |
前期定期試験 |
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16週 |
答案返却 |
問題解答を復習し、さらに、必要な補足説明、関連事項について講義を受ける。
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後期 |
3rdQ |
1週 |
相互誘導回路についての基礎式 |
相互インダクタンスを含む電気回路について成り立つ基本的な関係について理解し、説明できる。
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2週 |
変成器のエネルギーと結合係数 |
結合係数について、エネルギー保存の視点からの説明ができる。
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3週 |
変成器を用いた交流回路の基礎的な扱い |
変成器を用いた交流回路の基本回路として、二次側に負荷インピーダンスを接続した変成器における入力インピーダンスについての計算ができる。
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4週 |
T形等価回路とその応用 |
T形等価回路について説明でき、この等価回路を用いて相互誘導回路の回路計算ができる。
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5週 |
理想変成器の基礎 |
理想変成器の等価回路を、密結合変成器からの等価回路変換により導くことができる。
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6週 |
理想変成器の応用 |
理想変成器を用いた回路計算ができる。
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7週 |
問題演習 |
問題を解くことにより、変成器回路についての理解を深め、実践力を高める。
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8週 |
後期中間試験 |
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4thQ |
9週 |
回路の諸定理についての概要と重ねの理 |
重ねの理について理解し、説明できる。
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10週 |
可逆定理と補償定理 |
可逆定理と補償定理について理解し、説明できる。
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11週 |
テブナンの定理、ノートンの定理、 とミルマンの定理 |
テブナンの定理、ノートンの定理、ミルマンの定理を理解して説明できる。
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12週 |
問題演習 |
問題を解くことにより、回路の諸定理の理解を深め、実践力を高める。
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13週 |
逆回路と双対回路 |
逆回路と双対回路について理解し、説明できる。
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14週 |
問題演習 |
問題を解くことにより、逆回路・双対回路についての理解を深め、実践力を高める。
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15週 |
後期定期試験 |
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16週 |
答案返却 |
問題解答と必要な補足説明を行い、次年度に向けた学習についても説明する。
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モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標
分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 電気・電子系分野 | 電気回路 | 電荷と電流、電圧を説明できる。 | 4 | 前2 |
オームの法則を説明し、電流・電圧・抵抗の計算ができる。 | 4 | 前2 |
キルヒホッフの法則を用いて、直流回路の計算ができる。 | 3 | 前2 |
合成抵抗や分圧・分流の考え方を用いて、直流回路の計算ができる。 | 3 | 前2 |
重ねの理を説明し、直流回路の計算に用いることができる。 | 2 | 後9 |
ブリッジ回路を計算し、平衡条件を求められる。 | 2 | 前8 |
電力量と電力を説明し、これらを計算できる。 | 2 | 前11 |
正弦波交流の特徴を説明し、周波数や位相などを計算できる。 | 4 | 前3 |
平均値と実効値を説明し、これらを計算できる。 | 2 | 前5 |
正弦波交流のフェーザ表示を説明できる。 | 3 | 前4 |
R、L、C素子における正弦波電圧と電流の関係を説明できる。 | 2 | 前4 |
瞬時値を用いて、簡単な交流回路の計算ができる。 | 3 | 前3 |
フェーザを用いて、簡単な交流回路の計算ができる。 | 3 | 前4 |
インピーダンスとアドミタンスを説明し、これらを計算できる。 | 3 | 前7 |
正弦波交流の複素表示を説明し、これを交流回路の計算に用いることができる。 | 3 | 前7 |
キルヒホッフの法則を用いて、交流回路の計算ができる。 | 3 | 前2 |
合成インピーダンスや分圧・分流の考え方を用いて、交流回路の計算ができる。 | 3 | 前2 |
網目電流法や節点電位法を用いて交流回路の計算ができる。 | 3 | 前2 |
重ねの理やテブナンの定理等を説明し、これらを交流回路の計算に用いることができる。 | 2 | 後12 |
直列共振回路と並列共振回路の計算ができる。 | 2 | 前8 |
相互誘導を説明し、相互誘導回路の計算ができる。 | 2 | 後1 |
理想変成器を説明できる。 | 2 | 後5 |
交流電力と力率を説明し、これらを計算できる。 | 2 | 前11 |
評価割合
| 試験 | 小テスト | レポート | 合計 |
総合評価割合 | 80 | 10 | 10 | 100 |
基礎的能力 | 30 | 5 | 5 | 40 |
専門的能力 | 40 | 5 | 5 | 50 |
分野横断的能力 | 10 | 0 | 0 | 10 |