制御工学II

科目基礎情報

学校 熊本高等専門学校 開講年度 2018
授業科目 制御工学II
科目番号 CI501 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 制御情報システム工学科 対象学年 5
開設期 通年 週時間数 1
教科書/教材 演習で学ぶ現代制御理論 新装版  森 泰親  森北出版
担当教員 柴里 弘毅

到達目標

ディジタル技術検定(制御部門)2級程度の内容を理解し、低次システムに対するフィードバック系設計ができることを目標とする。

1. システムの状態方程式を導出することができる。
2. システムの可制御性・可観測性を調べることができる。
3. 低次システムに対して、極配置法を用いて制御器を設計できる。
4. 低次システムに対して、最適制御を用いて制御器を設計できる。
5. 制御系CADを用いて制御系設計やシミュレーションを行うことができる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1状態変数および状態方程式の役割について理解し、電気回路、機械振動系などの制御対象の特性を適切な数学モデルで表現できる。数学モデルより、対象の状態方程式を導出し、伝達関数やブロック線図との対応関係を説明できる。固有値の位置から安定性や応答特性を考察し、説明できる。また、期限内に所定の提出物を高い完成度で提出できる。状態変数および状態方程式の役割について理解し、電気回路、機械振動系などの制御対象の特性を適切な数学モデルで表現できる。数学モデルより、対象の状態方程式を導出することができる。固有値の位置と安定性の関係を説明できる。また、期限内に所定の提出物を概ね提出できる。状態変数および状態方程式の役割について理解し、電気回路、機械振動系などの制御対象の特性を適切な数学モデルで表現することができない。固有値の位置と安定性の関係を説明できない。また、期限内に所定の提出物を提出できない。
評価項目2システムの可制御性、可観測性の概念を理解し、システムの可制御性、可観測性の判定ができる。状態方程式で記述されたシステムを、対角正準形や可制御正準形に変換し、システムの特性を考察できる。また、期限内に所定の提出物を高い完成度で提出できる。システムの可制御性、可観測性の概念を理解し、システムの可制御性、可観測性の判定ができる。状態方程式で記述された単純なシステムを、対角正準形や可制御正準形に概ね変換することができる。また、期限内に所定の提出物を概ね提出できる。システムの可制御性、可観測性の概念を理解していない。システムの可制御性、可観測性の判定が正しくできない。状態方程式で記述された単純なシステムを、対角正準形や可制御正準形に変換することができない。また、期限内に所定の提出物を提出できない。
評価項目3直接法、可制御正準形、アッカーマン法による極配置法を理解し、対象に適した極配置手法を適用することができる。また、期限内に所定の提出物を高い完成度で提出できる。直接法による極配置法を理解し、数値例題に対して極配置することができる。また、期限内に所定の提出物を概ね提出できる。直接法による極配置法を理解できない。数値例題に対して極配置することができない。また、期限内に所定の提出物を提出できない。
評価項目4行列の正定性やリカッチ代数方程式を正しく理解し、低次のシステムに対して最適レギュレータを設計できる。また、期限内に所定の提出物を高い完成度で提出できる。行列の正定性やリカッチ代数方程式を理解し、低次のシステムに対して最適レギュレータを概ね設計できる。また、期限内に所定の提出物を概ね提出できる。行列の正定性やリカッチ代数方程式を理解していない。低次のシステムに対して最適レギュレータを設計できない。また、期限内に所定の提出物を提出できない。
評価項目5制御系CADを用いてプログラムを記述し、シミュレーション結果を考察できる。また、期限内に所定の提出物を高い完成度で提出できる。制御系CADを用いてプログラムを概ね記述できる。また、期限内に所定の提出物を概ね提出できる。制御系CADを用いてプログラムを記述できない。また、期限内に所定の提出物を提出できない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
本科目では4年次に学習する古典制御を発展させ、現代制御論の基本である状態方程式の導出、可制御性・可観測性判別、可制御正準形への変換、極配置・最適制御などの制御器設計法について講義する。また、コンピュータシミュレーション技術についても学ぶ。演習とシミュレーションにより学習項目の定着を図る。
授業の進め方・方法:
現代制御論を講義で解説するとともに演習問題に数多く取り組む。また、シミュレーションプログラムの作成も通じて理論と実践をバランスよく体得する。
注意点:
この科目では、調査活動やレポート作成などで年間に30時間の自学自習を課します。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ガイダンス 本講義の学習内容や目標、評価方法について理解し、説明できる。
2週 状態方程式によるシステムの記述(1) 状態変数および状態方程式の役割について理解し、説明できる。
3週 状態方程式によるシステムの記述(2) RLC電気回路について状態方程式を導出し、ブロック線図や伝達関数で表現できる。
4週 状態方程式によるシステムの記述(3) 機械振動系について状態方程式を導出し、ブロック線図や伝達関数で表現できる。
5週 システムの応答(1) 固有値と安定性の関係,対象の応答特性を説明できる。
6週 システムの応答(2) 固有値と安定性の関係,対象の応答特性を説明できる。
7週 システムの応答(3) 固有値と安定性の関係,対象の応答特性を説明できる。
8週 前期中間試験 前期中間四半期の学習範囲について到達度を確認し、改善することができる。
2ndQ
9週 可制御性(1) システムの可制御性の概念を理解し、可制御性判定ができる。
10週 可制御性(2) 状態方程式で記述されたシステムを対角正準形に変換し、可制御性の判定ができる。
11週 可制御性(3) 状態方程式で記述されたシステムを可制御正準形に変換し、可制御性の判定ができる。
12週 可制御性(4) 対角正準形や可制御正準形に等価変換されたシステムをブロック線図で表現できる。
13週 可観測性(1) システムの可観測性の概念を理解し、可観測性判定ができる。
14週 可観測性(2) 双対システムの概念を理解し、可制御性との対応関係を説明できる。
15週 前期定期試験 前期期末までの学習範囲について到達度を確認し、改善することができる。
16週 前期期末試験答案返却 前期期末までの学習範囲について到達度を確認し、改善することができる。
後期
3rdQ
1週 極配置法(1) 極配置の概念を理解し、直接法により、状態方程式で表された線形システムの閉ループの極を希望する位置に配置できる。
2週 極配置法(2) 可制御正準形を利用した方法により、状態方程式で表された線形システムの閉ループの極を希望する位置に配置できる。
3週 極配置法(3) 可制御正準形を利用した方法により、状態方程式で表された線形システムの閉ループの極を希望する位置に配置できる。
4週 極配置法(4) アッカーマンのアルゴリズムを用いて、状態方程式で表された線形システムの閉ループの極を希望する位置に配置できる。
5週 制御系CADを用いた設計とシミュレーション(1) 極配置について、制御系CADを用いて状態フィードバックゲインを導出できる。
6週 制御系CADを用いた設計とシミュレーション(2) 極配置について、制御系CADを用いて状態フィードバックゲインを導出できる。
7週 制御系CADを用いた設計とシミュレーション(3) 極配置について、制御系CADを用いて状態フィードバックゲインを導出できる。
8週 後期中間試験 後期中間四半期の学習内容について到達度を確認し、改善することができる。
4thQ
9週 最適レギュレータ(1) 最適レギュレータの概念を理解する。行列の正定・負定の判定ができる。
10週 最適レギュレータ(2) 重み行列の各要素を変数で置くことで、リカッチ代数方程式の解を求めることができる。
11週 最適レギュレータ(3) ハミルトン行列を理解する。有本-ポッターの方法を適用し、リカッチ代数方程式の解を求めることができる。
12週 最適レギュレータ(4) ハミルトン行列を理解する。有本-ポッターの方法を適用し、リカッチ代数方程式の解を求めることができる。
13週 制御系CADを用いた設計とシミュレーション(3) 制御系CADを用いて最適レギュレータゲインを設計することができる。重みの変化とゲイン、応答の関係を分析できる。
14週 制御系CADを用いた設計とシミュレーション(4) 制御系CADを用いて最適レギュレータゲインを設計することができる。重みの変化とゲイン、応答の関係を分析できる。
15週 後期定期試験 後期期末までの学習範囲について到達度を確認し、改善することができる。
16週 後期期末試験答案返却 後期期末までの学習範囲について到達度を確認し、改善することができる。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力数学数学数学整式の加減乗除の計算や、式の展開ができる。3
因数定理等を利用して、4次までの簡単な整式の因数分解ができる。3
分数式の加減乗除の計算ができる。3
実数・絶対値の意味を理解し、絶対値の簡単な計算ができる。3
平方根の基本的な計算ができる(分母の有理化も含む)。3
複素数の相等を理解し、その加減乗除の計算ができる。3
解の公式等を利用して、2次方程式を解くことができる。3
因数定理等を利用して、基本的な高次方程式を解くことができる。3
簡単な連立方程式を解くことができる。3
無理方程式・分数方程式を解くことができる。2
1次不等式や2次不等式を解くことができる。2
恒等式と方程式の違いを区別できる。2
2次関数の性質を理解し、グラフをかくことができ、最大値・最小値を求めることができる。2
分数関数や無理関数の性質を理解し、グラフをかくことができる。2
簡単な場合について、関数の逆関数を求め、そのグラフをかくことができる。2
累乗根の意味を理解し、指数法則を拡張し、計算に利用することができる。3
指数関数の性質を理解し、グラフをかくことができる。3
指数関数を含む簡単な方程式を解くことができる。2
対数の意味を理解し、対数を利用した計算ができる。2
対数関数の性質を理解し、グラフをかくことができる。2
対数関数を含む簡単な方程式を解くことができる。2
角を弧度法で表現することができる。3
三角関数の性質を理解し、グラフをかくことができる。3
加法定理および加法定理から導出される公式等を使うことができる。3
三角関数を含む簡単な方程式を解くことができる。3
三角比を理解し、簡単な場合について、三角比を求めることができる。3
2点間の距離を求めることができる。2
内分点の座標を求めることができる。2
2つの直線の平行・垂直条件を利用して、直線の方程式を求めることができる。2
簡単な場合について、円の方程式を求めることができる。2
放物線、楕円、双曲線の図形的な性質の違いを区別できる。2
簡単な場合について、不等式の表す領域を求めたり領域を不等式で表すことができる。2
ベクトルの定義を理解し、ベクトルの基本的な計算(和・差・定数倍)ができ、大きさを求めることができる。3
平面および空間ベクトルの成分表示ができ、成分表示を利用して簡単な計算ができる。3
平面および空間ベクトルの内積を求めることができる。3
問題を解くために、ベクトルの平行・垂直条件を利用することができる。3
空間内の直線・平面・球の方程式を求めることができる(必要に応じてベクトル方程式も扱う)。3
行列の定義を理解し、行列の和・差・スカラーとの積、行列の積を求めることができる。3
逆行列の定義を理解し、2次の正方行列の逆行列を求めることができる。3
行列式の定義および性質を理解し、基本的な行列式の値を求めることができる。3
線形変換の定義を理解し、線形変換を表す行列を求めることができる。3
合成変換や逆変換を表す行列を求めることができる。3
平面内の回転に対応する線形変換を表す行列を求めることができる。3
簡単な場合について、関数の極限を求めることができる。3
微分係数の意味や、導関数の定義を理解し、導関数を求めることができる。3
積・商の導関数の公式を用いて、導関数を求めることがができる。3
合成関数の導関数を求めることができる。3
三角関数・指数関数・対数関数の導関数を求めることができる。3
逆三角関数を理解し、逆三角関数の導関数を求めることができる。3
関数の増減表を書いて、極値を求め、グラフの概形をかくことができる。3
極値を利用して、関数の最大値・最小値を求めることができる。3
簡単な場合について、関数の接線の方程式を求めることができる。3
2次の導関数を利用して、グラフの凹凸を調べることができる。3
関数の媒介変数表示を理解し、媒介変数を利用して、その導関数を求めることができる。3
不定積分の定義を理解し、簡単な不定積分を求めることができる。3
置換積分および部分積分を用いて、不定積分や定積分を求めることができる。3
定積分の定義と微積分の基本定理を理解し、簡単な定積分を求めることができる。3
分数関数・無理関数・三角関数・指数関数・対数関数の不定積分・定積分を求めることができる。3
2変数関数の定義域を理解し、不等式やグラフで表すことができる。2
合成関数の偏微分法を利用して、偏導関数を求めることができる。2
簡単な関数について、2次までの偏導関数を求めることができる。2
偏導関数を用いて、基本的な2変数関数の極値を求めることができる。2
微分方程式の意味を理解し、簡単な変数分離形の微分方程式を解くことができる。3
簡単な1階線形微分方程式を解くことができる。3
定数係数2階斉次線形微分方程式を解くことができる。3
簡単な1変数関数の局所的な1次近似式を求めることができる。3
1変数関数のテイラー展開を理解し、基本的な関数のマクローリン展開を求めることができる。3
オイラーの公式を用いて、複素数変数の指数関数の簡単な計算ができる。3
自然科学物理力学速度と加速度の概念を説明できる。3
直線および平面運動において、2物体の相対速度、合成速度を求めることができる。3
等加速度直線運動の公式を用いて、物体の座標、時間、速度に関する計算ができる。3
平面内を移動する質点の運動を位置ベクトルの変化として扱うことができる。2
物体の変位、速度、加速度を微分・積分を用いて相互に計算することができる。2
平均の速度、平均の加速度を計算することができる。2
自由落下、及び鉛直投射した物体の座標、速度、時間に関する計算ができる。3
水平投射、及び斜方投射した物体の座標、速度、時間に関する計算ができる。3
物体に作用する力を図示することができる。3
力の合成と分解をすることができる。3
重力、抗力、張力、圧力について説明できる。2
フックの法則を用いて、弾性力の大きさを求めることができる。3
質点にはたらく力のつりあいの問題を解くことができる。3
慣性の法則について説明できる。3
作用と反作用の関係について、具体例を挙げて説明できる。3
運動方程式を用いた計算ができる。3
簡単な運動について微分方程式の形で運動方程式を立て、初期値問題として解くことができる。3
運動の法則について説明できる。3
静止摩擦力がはたらいている場合の力のつりあいについて説明できる。3
最大摩擦力に関する計算ができる。2
動摩擦力に関する計算ができる。3
物体の運動エネルギーに関する計算ができる。3
重力による位置エネルギーに関する計算ができる。3
弾性力による位置エネルギーに関する計算ができる。3
力学的エネルギー保存則を様々な物理量の計算に利用できる。3
周期、振動数など単振動を特徴づける諸量を求めることができる。3
単振動における変位、速度、加速度、力の関係を説明できる。3
力のモーメントを求めることができる。3
剛体における力のつり合いに関する計算ができる。3
一様な棒などの簡単な形状に対する慣性モーメントを求めることができる。3
剛体の回転運動について、回転の運動方程式を立てて解くことができる。3
時間の推移とともに、熱の移動によって熱平衡状態に達することを説明できる。2
物体の熱容量と比熱を用いた計算ができる。2
熱量の保存則を表す式を立て、熱容量や比熱を求めることができる。2
電気オームの法則から、電圧、電流、抵抗に関する計算ができる。3
抵抗を直列接続、及び並列接続したときの合成抵抗の値を求めることができる。3
ジュール熱や電力を求めることができる。2
専門的能力分野別の専門工学電気・電子系分野電気回路電荷と電流、電圧を説明できる。2前3
オームの法則を説明し、電流・電圧・抵抗の計算ができる。3前3
キルヒホッフの法則を用いて、直流回路の計算ができる。3
合成抵抗や分圧・分流の考え方を用いて、直流回路の計算ができる。3
正弦波交流の特徴を説明し、周波数や位相などを計算できる。3
平均値と実効値を説明し、これらを計算できる。2
正弦波交流のフェーザ表示を説明できる。2
R、L、C素子における正弦波電圧と電流の関係を説明できる。4前4,前5
瞬時値を用いて、交流回路の計算ができる。2
フェーザ表示を用いて、交流回路の計算ができる。2
インピーダンスとアドミタンスを説明し、これらを計算できる。2
キルヒホッフの法則を用いて、交流回路の計算ができる。4
合成インピーダンスや分圧・分流の考え方を用いて、交流回路の計算ができる。2
RL直列回路やRC直列回路等の単エネルギー回路の直流応答を計算し、過渡応答の特徴を説明できる。4前4,前5
RLC直列回路等の複エネルギー回路の直流応答を計算し、過渡応答の特徴を説明できる。4前3,前4,前5
制御伝達関数を用いたシステムの入出力表現ができる。4前3,前4
ブロック線図を用いてシステムを表現することができる。4前3,前4
システムの過渡特性について、ステップ応答を用いて説明できる。4前3,前4,前5,前6,前7
システムの定常特性について、定常偏差を用いて説明できる。4前3,前4,前5,前6,前7
システムの周波数特性について、ボード線図を用いて説明できる。4前3,前4,前5,前6,前7
フィードバックシステムの安定判別法について説明できる。4後1,後2,後3,後4

評価割合

試験レポート家庭学習合計
総合評価割合602515100
基礎的能力051015
専門的能力4010555
分野横断的能力2010030