概要:
生体工学は体の構造や働きを力学的,工学的手法を用いて解析する学問であり,その結果を工業的に応用することを目的としている.また生体を調べることにより,治療や診断,またはそのために必要な治療計画や治療具,計測装置,さらに身体機能代替機器等の設計・開発にも繋がっている.解析の例として,例えば骨格系は材料力学を基礎として解析され,血流の解析には流体力学が用いられる.
本科目は力学的,工学的手法を用いて生体の構造と働きを解析する生体工学の手法を学ぶことで,生体への理解を深めることと,生体の問題の要点の理解と解決のための基礎能力を養成することを目的とする.
授業の進め方・方法:
授業は教科書を中心に生体の力学的特性を学び,そしてそれを力学的手法で解析する方法を学ぶ.その際,工業材料と生体組織の特性の違いは注視すべき点である.特に生体は機能適応により環境に応じてその特性を変化させるため,その理解の有無は生体の力学的,工学的アプローチにおいて注意すべき点の一つである.
成績評価は,2回の定期試験の結果の平均を評価点とし,合格点は60点とする.また授業に関連する内容について自主的にレポートを作成し,提出したものについては,自主性を評価し,評価点に加点することもある.
注意点:
生体工学は身体という大変身近なものを取り扱う分野である.自分たちの身体が一体どのようなものなのか,そういったことを考えれば自然と興味もわくと思われるので,その興味を満たすよう積極的に取り組み,特に興味を持った部位・構造については自主的に知識の根を広げていくことを目指してもらいたい.
なお本科目の名称は生体工学(バイオニクス)であるのに対し,授業は生体力学(バイオメカニクス)の教科書を用いているが,双方とも生体を力学的,工学的に解析することは同じなので生体工学の基礎を学習するにあたって問題はない.
両者は,生体工学がメカニズムの工業的応用を目指すのに対し,生体力学は解析により生体の働きの解明が目的であるという,目的の違いがあるため違う学問として取り扱われるが,その解析手法と必要な知識は重なるところが多い.
分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 機械系分野 | 力学 | 荷重が作用した時の材料の変形を説明できる。 | 4 | 後2,後3,後4,後5,後6,後11,後12,後13,後14 |
応力とひずみを説明できる。 | 4 | 後2,後3,後4,後5,後6,後11,後12,後13,後14 |
フックの法則を理解し、弾性係数を説明できる。 | 4 | 後2,後3,後12,後13,後14 |
断面が変化する棒について、応力と伸びを計算できる。 | 4 | 後2,後3,後12,後13,後14 |
ねじりを受ける丸棒のせん断ひずみとせん断応力を計算できる。 | 4 | 後2,後3,後12,後13,後14 |
丸棒および中空丸棒について、断面二次極モーメントと極断面係数を計算できる。 | 4 | 後2,後3,後12,後13,後14 |
熱流体 | 流体の性質を表す各種物理量の定義と単位を理解し、適用できる。 | 4 | 後9,後10,後11,後14 |
ニュートンの粘性法則、ニュートン流体、非ニュートン流体を説明できる。 | 4 | 後9,後10,後11,後14 |
定常流と非定常流の違いを説明できる。 | 4 | 後9,後10,後11,後14 |
質量保存則と連続の式を説明できる。 | 4 | 後9,後10,後11,後14 |
連続の式を理解し、諸問題の流速と流量を計算できる。 | 4 | 後9,後10,後11,後14 |
オイラーの運動方程式を説明できる。 | 4 | 後9,後10,後11,後14 |
層流と乱流の違いを説明できる。 | 4 | 後9,後10,後11,後14 |
ハーゲン・ポアズイユの法則を説明できる。 | 4 | 後9,後10,後11,後14 |
材料 | 引張試験の方法を理解し、応力-ひずみ線図を説明できる。 | 4 | 後2,後3,後4,後5,後6,後7,後12,後13,後14 |