有機化学II

科目基礎情報

学校 熊本高等専門学校 開講年度 令和03年度 (2021年度)
授業科目 有機化学II
科目番号 0063 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 生物化学システム工学科 対象学年 4
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 教科書「ハート基礎有機化学」培風館,参考書「プログラム学習 電子で考える有機化学」F.M. Mengerほか,井上幸信訳,講談社サイエンティフィク; 「Solomons Fundamentals of Organic Chemistry」T.W.Graham Solomons, WILEY; 「Introduction to Organic Chemistry」W. Brown, T. Poon, WILEY
担当教員 大島 賢治

到達目標

1.有機化合物の基本的な構造を原子価理論に基づいて説明できる.
2.立体化学の表現方法を化合物に適用できる.
3.有機化合物の諸反応を説明できる.
4.有機化学における基本的な反応機構に基づいて,反応の結果を予測できる.
5.有機合成による物質の製造について反応式を用いて例示できる.

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
原子価理論と有機化合物の形成分子の構造から,有機化合物の物理的性質・反応性を説明できる有機化合物の基本的な構造,原子の電子配置,共有結合を説明できる有機化合物の基本的な構造,原子の電子配置,共有結合を説明できない
有機化合物の立体構造有機化合物の立体構造を,有機化学反応の立体選択性と関連付けられる 立体化学の表現方法を化合物に適用できる立体化学の表現方法を化合物に適用できない
有機化学反応の基礎有機化合物の基本的な反応を複雑な化合物に適用して説明できる有機化合物の基本的な反応を説明できる有機化合物の基本的な反応を説明できない

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
 有機化合物の電子状態および立体構造を学び,これらから説明される有機化学反応の起こり方を理解する.そして機能性化合物のデザイン・合成や生体反応の分子論的理解を含む応用的な課題に対応する力を養う.
*実務との関係
 この科目は企業で医農薬の探索合成・製法研究を担当していた教員が,その経験を活かし,有機化学反応の原理と活用方法について講義形式で授業を行うものである.
授業の進め方・方法:
 講義では教科書を読み進めるための重要な項目および原理を解説する.学生は教科書を熟読し,例題に自力で解答し,正答と照合しながら誤りを修正,考察,疑問を質問することにより一つずつ理解を深める.そして,自力で知識を活用できる力を養う.
注意点:
 努力して理解を進めるにしたがい,有機化学反応・生体反応がどのように起こるかが面白いほどクリアになり,機能性材料の開発,生体反応の理解・制御など,広い分野に活用できる基礎が得られる講義である.自分で手を動かし,構造式,立体構造や反応機構をいつも書いてみる必要がある.

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 有機化合物の結合1
炭素原子,窒素原子等のsp3混成軌道,炭素原子,ホウ素原子等のsp2混成軌道,オクテット則
混成軌道の考え方に基づき,簡単な有機化合物の立体構造を説明できる。
2週 アルカンとシクロアルカンの立体配座 アルカン・シクロアルカンの安定な立体配座を説明できる。
3週 アルケンの反応1 水およびハロゲン化水素の付加,Markovnikov則 アルケンへの基本的な付加反応の結果と反応機構を説明できる。
4週 アルケンの反応2 ヒドロホウ素化,Anti-Markovnikokov型の付加生成物 アルケンへの特殊な付加反応の結果と反応機構を説明でき,応用例を理解できる。
5週 アルケンの反応3 アルケンの酸化によるジオール化,分解,エポキシ化 アルケンの酸化の結果を説明できる。
6週 芳香族化合物の反応1
芳香族化合物,共鳴安定化エネルギー,ベンゼンの置換生成物
芳香族化合物の特徴,共鳴安定化エネルギーを説明できる。ベンゼンの置換生成物を工業製品の中から挙げられる。
7週 芳香族化合物の反応2
芳香族求電子置換反応
芳香族のハロゲン化,ニトロ化,スルホン化,アルキル化,アシル化の代表的な反応条件を説明できる。
8週 芳香族化合物の反応3
芳香族求電子置換反応の反応速度と配向性
芳香族求電子置換反応の反応速度と配向性を説明できる。
2ndQ
9週 前期中間試験
10週 立体異性:鏡像異性体と光学活性,
鏡像異性体と光学活性を説明できる。旋光度計の原理を説明できる。
11週 ハロアルカンの反応1
SN2反応
SN2反応の結果と反応機構を説明できる。
12週 ハロアルカンの反応2
SN2反応に影響する因子
SN2反応の結果をハロアルカンの立体構造に関連させて説明できる。
13週 ハロアルカンの反応3
SN1反応
SN1反応の結果と反応機構を説明できる。
14週 ハロアルカンの反応4
E2反応,E1反応
E2反応,E1反応の結果と反応機構を説明できる。
15週 前期定期試験
16週 試験解説
後期
3rdQ
1週 アルコール,フェノール アルコール,フェノールの性質,酸性度の違いを説明できる。
2週 アルコールの反応 アルコールの置換反応を説明できる
3週 エーテルとエポキシド エーテルとエポキシドの反応,用途を説明できる。
4週 アルデヒドとケトン1
アルデヒドの性質と反応(水和,ヘミアセタール化)
アルデヒド・ケトンの特徴を説明できる。水やアルコールの付加・置換による生成物の構造式が書ける。
5週 アルデヒドとケトン2
アルデヒドの性質と反応(アセタール化)
アルデヒド・ケトンの特徴を説明できる。水やアルコールの付加・置換による生成物の構造式が書ける。
6週 アルデヒドとケトン3
Grignard試薬との反応
アルデヒド・ケトンへのGrignard試薬の付加反応を説明できる。
7週 ヒドリド試薬との反応 アルデヒド・ケトンへのヒドリド試薬の付加反応を説明できる。
8週 後期中間試験
4thQ
9週 アルデヒドとケトン4
イミンの生成と還元的アミノ化
アルデヒド・ケトンへのアミンの付加と脱水によるイミンの生成を説明できる。イミンの還元を説明できる。
10週 アルデヒドとケトン5
ケト/エノール互変異性、アルドール縮合
ケト/エノール互変異性およびα水素の酸性度について説明できる。
11週 アルデヒドとケトン6
アルドール縮合
アルドール付加・脱水の反応機構を説明し,生成物を予想できる。
12週 カルボン酸とその誘導体1
カルボン酸の性質と反応,エステル化,アミド化
カルボン酸の構造と性質,エステルとアミドの構造を説明できる。これらの工業的な製品について例を挙げられる。
13週 カルボン酸とその誘導体2
カルボン酸誘導体,カルボン酸無水物,カルボン酸塩化物
カルボン酸無水物,カルボン酸塩化物の利用方法を説明できる。
14週 有機合成化学
基本的な反応を用いる有機合成反応
医薬品・合成樹脂の合成への,基礎的な有機化学反応の適用例を説明できる。
いくつかの生化学反応に対して,有機化学の基本反応を適用して説明できる。
15週 後期学年末試験
16週 試験解説 有機化合物の電子状態および立体構造から説明される有機化学反応の起こり方を説明できる。そして機能性化合物のデザイン・合成や生体反応の分子論的理解を含む応用的な課題に対応する力を修得する。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野有機化学有機物が炭素骨格を持つ化合物であることを説明できる。4前1
代表的な官能基を有する化合物を含み、IUPACの命名法に基づき、構造から名前、名前から構造の変換ができる。4後1,後4,後5,後6
σ結合とπ結合について説明できる。4前1,前6
混成軌道を用い物質の形を説明できる。4前1,前2,前6
誘起効果と共鳴効果を理解し、結合の分極を予測できる。4後4,後6
σ結合とπ結合の違いを分子軌道を使い説明できる。4前12
ルイス構造を書くことができ、それを利用して反応に結びつけることができる。4前1,前6,前11,前13,前14,後1,後2,後3,後4,後5,後6,後7,後9,後10,後11,後12
共鳴構造について説明できる。4前6,後1,後4,後6,後11,後12
炭化水素の種類と、それらに関する性質および代表的な反応を説明できる。4前2,前3,前4,前5,前6,前7,前8,後9
芳香族性についてヒュッケル則に基づき説明できる。4前6,後9
分子の三次元的な構造がイメージでき、異性体について説明できる。4前1,前2,前10
構造異性体、シスートランス異性体、鏡像異性体などを説明できる。4前2,前10
化合物の立体化学に関して、その表記法により正しく表示できる。4前2,前10
代表的な官能基に関して、その構造および性質を説明できる。4前3,前6,前11,後1,後6,後7,後9
それらの官能基を含む化合物の合成法およびその反応を説明できる。4前3,前4,前5,前7,前8,前11,前12,前13,前14,後2,後3,後4,後5,後6,後7,後9,後10,後11,後12,後14
代表的な反応に関して、その反応機構を説明できる。4前3,前4,前5,前7,前8,前11,前12,前13,前14,後2,後3,後4,後5,後6,後7,後9,後10,後11,後12,後14
電子論に立脚し、構造と反応性の関係が予測できる。4前3,前4,前5,前7,前8,前11,前12,前13,前14,後2,後3,後4,後5,後6,後7,後9,後10,後11,後12,後13,後14
反応機構に基づき、生成物が予測できる。4前3,前4,前5,前7,前8,前11,前12,前13,前14,後2,後3,後5,後6,後7,後9,後10,後12,後13,後14
無機化学電子殻、電子軌道、電子軌道の形を説明できる。4前1
パウリの排他原理、軌道のエネルギー準位、フントの規則から電子の配置を示すことができる。4前1
価電子について理解し、希ガス構造やイオンの生成について説明できる。4前1
基本的な化学結合の表し方として、電子配置をルイス構造で示すことができる。4前1
代表的な分子に関して、原子価結合法(VB法)や分子軌道法(MO法)から共有結合を説明できる。4前1
電子配置から混成軌道の形成について説明することができる。4前1
水素結合について説明できる。4後1

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合10000000100
基礎的能力0000000
専門的能力10000000100
分野横断的能力0000000