物理化学II

科目基礎情報

学校 熊本高等専門学校 開講年度 令和03年度 (2021年度)
授業科目 物理化学II
科目番号 0065 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 生物化学システム工学科 対象学年 4
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 現代物理化学 (化学同人) 配布プリント
担当教員 田浦 昌純

到達目標

1. 原子構造、電子構造について基本事項を理解し、説明できる。
2. 光と電子の二重性を理解し、説明できる。
3. 多電子原子の軌道エネルギーと電子配置、周期表の関係を理解し、説明できる
4. 化学結合、混成軌道について基本事項を理解している。 
5. 分子の振動・回転・並進エネルギーを理解し、エネルギー準位を計算できる。
6. 分子のエネルギー準位と分子論的な確率の概念の理解の上で、内部エネルギーとエンタルピーを詳しく説明できる。
7. 熱化学の基本的事項を理解し、熱力学変化量を計算できる
8. エントロピー、自由エネルギーの基本事項を理解し、熱力学変化量を計算できる。
9. 物理化学に関する基本的な英文を解釈できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
量子化学の基本的な概念 量子化学の基本的な概念(原子構造、電子構造、光と電子の二重性、多電子原子の軌道エネルギーと電子配置、周期表の関係を詳しく説明できる。量子化学の基本的な概念(原子構造、電子構造、光と電子の二重性、多電子原子の軌道エネルギーと電子配置、周期表の関係を、概略、説明できる。量子化学の基本的な概念(原子構造、電子構造、光と電子の二重性、多電子原子の軌道エネルギーと電子配置、周期表の関係を説明できない。
化学結合量子化学に基づき、化学結合、混成軌道について、詳しく説明できる。量子化学に基づき、化学結合、混成軌道について、概略、説明できる。量子化学に基づき、化学結合、混成軌道について、説明できない。
エネルギー準位実在の系の分子の振動・回転・並進エネルギーの意味を説明でき、エネルギー準位を計算できる。実在の系の分子の振動・回転・並進エネルギーの意味を理解でき、エネルギー準位を計算できる。実在の系の分子の振動・回転・並進エネルギーの意味を理解できず、エネルギー準位を計算できない。
分子の内部エネルギーの理解とエネルギー準位の計算分子のエネルギー準位と分子論的な確率の概念の理解の上で、内部エネルギーとエンタルピーを詳しく説明できる。分子のエネルギー準位と分子論的な確率の理解の上で、内部エネルギーとエンタルピーを、概略、説明できる。分子のエネルギー準位と分子論的な確率の概念から、内部エネルギーとエンタルピーを説明できない。
熱化学の基本的事項の理解と熱力学変化量の計算熱化学の基本的事項を詳しく説明でき、熱力学変化量を正確・迅速に計算できる。熱化学の基本的事項を理解し、正確に熱力学変化量を計算できる。熱化学の基本的事項を説明できず、熱力学変化量を計算できない。
エントロピー、自由エネルギーの基本事項の理解と、熱力学変化量の計算エントロピー、自由エネルギーの基本事項を詳しく説明でき、熱力学変化量を正確・迅速に計算できる。エントロピー、自由エネルギーの基本事項を理解し、正確に、熱力学変化量を計算できる。エントロピー、自由エネルギーの基本事項を説明できず、熱力学変化量を計算できない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
本科目では、化学工業や生物化学反応で重要な概念であるエネルギー(熱力学,熱化学)をマクロおよびミクロな観点から捉え、導かれた法則を理解し、現実問題へ適用する際の基礎を学ぶ。また、生物化学システム工学科で学ぶ物質化学系科目の集大成として位置づけ、「自然科学に関する知識とそれらを応用できる能力」を養成する。
※実務との関係
この科目は、企業で火力発電プラント・原子力プラント・化学プラント・ディーゼルエンジンの研究開発実務及びプロジェクト管理  を担当していた教員が、その経験を生かして、実プラントにおける、熱現象・反応性、熱平衡・化学平衡、反応物の分析の基礎となる、量子論と熱力学について講義形式で授業を行うものである。
授業の進め方・方法:
授業では、説明と演習を中心に進める。講義の組み立ては、前回分の復習、本題、必要に応じた演習問題とする。量子化学の基礎をベースにした化学結合の本質と、熱力学第一法帆に基づいた熱化学の考え方と利用方法をできるだけ平易に、生物化学分野との関連も示しながら進めるので、基本的な考え方への理解を深め、計算ができることを目標とする。
注意点:
授業前に教科書に目を通しておく。授業後は講義のノート、配布資料をもとに、教科書の例題、章末問題をまず自分で考える。その後、解答を参照することで理解できなかった点を再度復習して基本事項を着実に身につけること。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ガイダンス,原子の構造と電子殻
原子構造、電子構造について基本事項を理解し、説明できる。
2週 電子のエネルギー準位と原子スペクトル 電子のエネルギー準位を理解し、原子スペクトルとの関係を説明できる。
3週 原子軌道と電子配置、周期表
多電子原子の軌道エネルギーと電子配置、周期表の関係を理解し、説明できる。
4週 光と電子の二重性
光と電子の二重性を理解し、説明できる。
5週 古典力学と量子力学における波動方程式 古典力学における波動方程式を基に、量子力学における波動方程式の導出過程を理解できる。
6週 水素原子の波動関数と多電子原子の軌道エネルギー 水素原子及び多電子原子の軌道エネルギー準位を理解し、電子配置の規則を説明できる。
7週 分子シミュレーション(演習) 分子シミュレーションにより、量子力学的な量を計算できる。
8週 〔中間試験〕
2ndQ
9週 答案返却と解説、化学結合と分子構造1 分子軌道法による分子の電子状態の計算方法を理解できる。
10週 化学結合と分子構造2(混成軌道) 混成軌道の概念を理解できる。 
11週 化学結合と分子構造3フロンティア軌道 フロンティア軌道の概念を理解できる。 
12週 実在の化学系のエネルギー準位1(振動) 分子の振動エネルギーの意味を理解でき、エネルギー準位を計算できる。
13週 実在の化学系のエネルギー準位2(回転) 分子の回転エネルギーの意味を理解でき、エネルギー準位を計算できる。
14週 実在の化学系のエネルギー準位3(並進) 分子の並進エネルギーの意味を理解でき、エネルギー準位を計算できる。
15週 前期定期試験
16週 前期定期試験の返却と解説
後期
3rdQ
1週 実在の化学系のエネルギー準位 実在の化学系のエネルギー準位の意味とエネルギーの大きさを理解できる。
2週 実在の化学系のエネルギー準位と分光分析法 実在の化学系のエネルギー準位と分光分析法の関係を理解できる。
3週 ボルツマン分布と内部エネルギー エネルギー量子のボルツマン分布の仕方を理解し、ミクロな状態の取り得る状態の数を計算でき、内部エネルギーの変化を計算できる。
4週 熱・仕事・エンタルピー 熱力学の基本的事項を理解し、熱化学変化量を計算できる。
5週 熱容量 熱容量の定義を理解し、計算できる。
6週 熱力学第一法則 熱力学第一法則を用いて、状態変化を計算できる。
7週 熱化学
ヘスの法則・キルヒホッフの法則
ヘスの法則を用いて、化学反応のエンタルピー変化を計算できる。
8週 〔中間試験〕
4thQ
9週 中間試験返却と解説、統計力学的エントロピー 統計力学的エントロピーの概念を理解できる。
10週 統計力学的エントロピー 統計力学的エントロピーの概念を理解できる。
11週 熱力学的エントロピー 熱力学的エンロピーの概念を理解できる。
12週 標準エントロピー 状態変化、化学変化において、標準エントロピーを用いて、熱力学諸量を計算できる。
13週 ギブスの自由エネルギーの概念 ギブスの自由エネルギーの概念を理解できる。
14週 ギブスの自由エネルギーと化学平衡 ギブスの自由エネルギーと化学平衡の関係を理解し、相互に計算できる。
15週 ギブスの自由エネルギーと電気化学・生態系への応用 ギブスの自由エネルギーと電気化学反応・生態反応との関係を理解できる。
16週 後期定期試験の返却と解説

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野有機化学σ結合とπ結合について説明できる。4前9
混成軌道を用い物質の形を説明できる。4前10
σ結合とπ結合の違いを分子軌道を使い説明できる。4前9
無機化学主量子数、方位量子数、磁気量子数について説明できる。4前6
電子殻、電子軌道、電子軌道の形を説明できる。4前6
パウリの排他原理、軌道のエネルギー準位、フントの規則から電子の配置を示すことができる。4前6
価電子について理解し、希ガス構造やイオンの生成について説明できる。4前6
元素の周期律を理解し、典型元素や遷移元素の一般的な性質を説明できる。4前6
イオン化エネルギー、電子親和力、電気陰性度について説明できる。4前6
イオン結合と共有結合について説明できる。4前6
基本的な化学結合の表し方として、電子配置をルイス構造で示すことができる。4前6
電子配置から混成軌道の形成について説明することができる。4前10
物理化学熱力学の第一法則の定義と適用方法を説明できる。4後6
エンタルピーの定義と適用方法を説明できる。4後4
化合物の標準生成エンタルピーを計算できる。4後6
エンタルピーの温度依存性を計算できる。4後6
内部エネルギー、熱容量の定義と適用方法を説明できる。4後5
熱力学の第二・第三法則の定義と適用方法を説明できる。4後11
純物質の絶対エントロピーを計算できる。4後11
化学反応でのエントロピー変化を計算できる。4後12
化合物の標準生成自由エネルギーを計算できる。4後13
反応における自由エネルギー変化より、平衡定数・組成を計算できる。4後14
平衡定数の温度依存性を計算できる。4後14
気体の等温、定圧、定容および断熱変化のdU、W、Qを計算できる。4後6

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオ課題合計
総合評価割合85000015100
基礎的能力0000000
専門的能力85000015100
分野横断的能力0000000