微生物工学

科目基礎情報

学校 熊本高等専門学校 開講年度 令和04年度 (2022年度)
授業科目 微生物工学
科目番号 0085 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 生物化学システム工学科 対象学年 5
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 新版生物化学工学(講談社)絵とき生物化学工学基礎のきそ(日刊工業新聞社)
担当教員 富澤 哲

到達目標

1.培地の考え方、微生物の生育に影響する因子、培養の基本操作が理解できる.
2.回分培養における制限基質、比増殖速度、世代時間、基質親和性の概念が理解できる.
3.連続培養物質収支・定常値の定量的表現ができ、生産性の概念が理解できる.
4.細胞返送を伴う連続培養の意義を理解し、その応用例について説明できる.
5.酸素移動容量係数(kLa)が好気性培養槽の性能を表す指標となることが理解できる.
6.培養槽のスケールアップの考え方が理解できる.

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
培地構成因子と対象微生物についての理解培地組成を見て、炭素源、エネルギー源、窒素源を指摘でき、生育対象とする微生物の種類が正確に判断できる。培地組成を見て、炭素源、エネルギー源、窒素源を指摘でき、生育対象とする微生物の種類が概ね判断できる。培地組成を見ても炭素源、エネルギー源、窒素源を指摘できず、生育対象とする微生物の種類も判断できない。
回分培養と連続培養における増殖速度の定量的理解回分培養における比増殖速度の決まり方、連続培養における物質収支式の立て方を明確に説明できる。回分培養における比増殖速度の決まり方、連続培養における物質収支式の概念が何とか理解できる。回分培養における比増殖速度の求め方や連続培養における物質収支式の考え方が理解できない。
培養生産性の理解生産性の概念を理解し、回分培養と連続培養における生産性の量的比較ができる。生産性の概念は理解できるが回分培養と連続培養における生産性の量的比較を行うことは難しい。生産性の概念を理解できない。
酸素移動容量係数(kLa)のもつ意味の理解酸素移動容量係数(kLa)が好気性培養槽の性能を表す指標となることを定量的に理解できる。酸素移動容量係数(kLa)が好気性培養槽の性能を表す指標となることを概念的に理解できる。酸素移動容量係数(kLa)が好気性培養槽の性能にどのような影響を及ぼすか理解できない。
スケールアップにおける状態変化についての理解通気培養槽をスケールアップする際に変動する因子をすべて挙げることができる。通気培養槽をスケールアップする際に変動する因子をいくつか挙げることができる。通気培養槽をスケールアップする際に変動する因子がわからない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
主テーマとして生物細胞の培養理論と酸素移動を扱い、生物反応を定量的に取り扱うための方法論を中心に講義する。前半では生物生産を目的とする培養理論とその応用例を学ぶ。後半では酸素移動理論と培養槽のスケールアップの考え方を学ぶ。
*実務との関係
 この科目は独立行政法人で微生物培養を担当していた教員が、その経験を活かし、溶存酸素の特性、回分培養と連続培養等について講義形式で授業を行うものである。
授業の進め方・方法:
授業はテキストに従って進め,基礎理論の解説が中心となるが、理解度を確認しながら進めたいために可能な限り質疑応答を求める。基礎理論をどのように適用するかは演習問題を解いてみて身につくが、時間的制約によりこれを授業時間内で実施することは難しいため、時間外の十分な自学自習が必要である。
注意点:
* 項目毎に重要なキーワードについては繰り返し説明するので聞き逃さないように.
* 理論解析や計算も多いので,教科書にある例題等を含め演習問題を数多く解き,時間をかけて理解するよう努めること。特に単位換算に注意すること。
* 疑問に思うことは自ら調べ、また、質問に来てください.質問はいつでも受け付けます.

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 バイオプロセスと生物化学工学 バイオプロセスと生物化学工学の役割について説明できる
2週 生体触媒の特性1 酵素の特性について説明できる。
3週 生体触媒の特性2 微生物の特性について説明できる。
4週 生体触媒の特性3 動物細胞・植物細胞・昆虫細胞の特性について説明できる。
5週 酵素反応速度論1 Michaelis-Menten式をベースとした反応速度論について説明できる。
6週 酵素反応速度論2 阻害のある酵素反応速度について説明できる。
7週 酵素反応速度論3 細胞が関連する生化学反応速度について説明できる。
8週 中間試験
2ndQ
9週 試験返却と解説
10週 バイオリアクターの設計と操作1 バイオリアクターの形式と操作について説明できる。
11週 バイオリアクターの設計と操作2 酵素を用いるバイオリアクターの特徴を説明できる。
12週 回分培養(1) 比増殖速度と世代時間について理解し、説明できる。
13週 回分培養(2) 制限基質と親和性について理解し、説明できる。
14週 連続培養(1) 平衡と定常の概念を理解し、物質収支の式が立てられる。
15週 連続培養(2) ケモスタットとタービドスタットについて理解し、説明できる。
16週 前期期末試験
後期
3rdQ
1週 培養における生産性 回分培養と連続培養の生産性を比較し、説明できる。
2週 連続培養の応用1 細胞返送を伴う連続培養について理解し、説明できる。
3週 連続培養の応用2 活性汚泥法と嫌気性処理について理解し、説明できる。
4週 酸素移動1 物質の拡散とFickの法則について理解し、説明できる。
5週 酸素移動2 酸素移動容量(kLa)について理解し、説明できる。
6週 酸素移動3 kLaの計測法、kLaと細胞濃度最大値について理解し、説明できる。
7週 スケールアップとスケールダウン kLaに影響する因子、培養槽のスケールの影響について理解し、説明できる。
8週 後期中間試験
4thQ
9週 試験返却と解説
10週 バイオプロセスの操作要素1 培養液のレオロジー特性について説明できる。
11週 バイオプロセスの操作要素2 滅菌操作について説明できる。
12週 バイオプロセスの操作要素3 撹拌操作について説明できる。
13週 バイオプロセスの操作要素4 分離精製を目的とした操作について説明できる。
14週 バイオプロセスの実際1 固定化酵素・固定化細胞の利用について説明できる。
15週 バイオプロセスの実際2 バイオプロセス技術のこれからについて説明できる。
16週 学年末試験

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野化学工学物質の流れと物質収支についての計算ができる。4前5,前8,前10,前11,前12,前13,前14
化学反応を伴う場合と伴わない場合のプロセスの物質収支の計算ができる。2前5
バッチ式と連続式反応装置について特徴や用途を理解できる。4前6,前7
生物工学微生物の増殖(増殖曲線)について説明できる。4前2,前3,前4,後1,後2,後3
微生物の育種方法について説明できる。4前1,前8,前10,後1
微生物の培養方法について説明でき、安全対策についても説明できる。4前1,前8,前10,前13,前14,後1
微生物を用いた廃水処理・バイオレメディエーションについて説明できる。4前8,前10,後9,後10

評価割合

試験レポート相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合60400000100
基礎的能力2010000030
専門的能力4030000070
分野横断的能力0000000