固体力学

科目基礎情報

学校 大分工業高等専門学校 開講年度 平成30年度 (2018年度)
授業科目 固体力学
科目番号 30AMC112 科目区分 専門 / 選択
授業形態 授業 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 専攻科機械・環境システム工学専攻 対象学年 専1
開設期 前期 週時間数 前期:2
教科書/教材 教科書:園田佳臣・島田英樹,「工学基礎 固体力学」,共立出版/参考図書:Timoshenko, S.P. and Goodier, J.N., "Theory of Elasticity (THIRD EDITION)", McGraw-Hill Book Company
担当教員 名木野 晴暢

到達目標

(1) 物体に作用する荷重に対する物体の変形を理解できる.(定期試験・課題)
(2) 応力とひずみの定義を理解できる.(定期試験・課題)
(3) 弾性体の基礎方程式(つり合い方程式,変位ーひずみの関係式,構成方程式)と境界条件(力学的境界条件,幾何学的境界条件)を理解できる.(定期試験・課題)
(4) 三次元弾性問題から二次元弾性問題(平面応力問題,平面ひずみ問題)および一次元弾性問題(直線部材の引張問題,直線部材の曲げ問題)を導出することができる.(定期試験・課題)
(5) Airyの応力関数を用いて平面部材の応力を求めることができ,その力学的な意味を理解できる.(定期試験・課題)
(6) 種々の環境によって線部材に生じる応力を求めることができ,その力学的な意味を理解できる.(定期試験・課題)

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
物体に作用する荷重と,これに対する物体の変形についての理解物体に作用する荷重に対する物体の変形を理解できる.物体に作用する荷重は理解できるが,これ対する物体の変形を理解できない.物体に作用する荷重に対する物体の変形を理解できない.
応力とひずみの定義についての理解応力とひずみの定義を理解できる.応力の定義は理解できるが,ひずみのそれを理解できない.応力とひずみの定義を理解できない.
弾性体の基礎方程式と境界条件についての理解弾性体の基礎方程式と境界条件を理解できる.弾性体の基礎方程式は理解できるが,境界条件を理解できない.弾性体の基礎方程式と境界条件を理解できない.
三次元弾性問題と一次元弾性問題との関係性についての理解三次元弾性問題から一次元弾性問題を導出することができ,これの厳密解や解析解を求めることができる.三次元弾性問題から一次元弾性問題を導出できる.三次元弾性問題から一次元弾性問題を導出することができない.
エネルギ原理についての理解Clapeyronの定理,仮想仕事の原理およびポテンシャルエネルギ最小の原理を深く理解できる.Clapeyronの定理,仮想仕事の原理およびポテンシャルエネルギ最小の原理を理解できる.エネルギ原理を理解できない.

学科の到達目標項目との関係

学習・教育到達度目標 (E1) 説明 閉じる
JABEE 1(2)(d)(1) 説明 閉じる
JABEE 1(2)(g) 説明 閉じる

教育方法等

概要:
 近年の構造物や構造材料の高機能化・高性能化に伴い,構造力学や材料力学のような巨視的な視点のみによる問題の解決が難しくなってきている.構造物を安全かつ合理的に設計するためには,さらに微視的な視点から応力とひずみなどを用いて問題を解決していくことが必要になる.また,有限要素法は,産業界における有力な問題解決手法の一つであるが,これにより得られる結果を正しく判断し,問題解決に活用するためには,応力とひずみの知識が必要になる.
 本講義では,弾性学の基礎理論を修得することを目的としている.近年では,複合材料を使用する機会が増えているので,異方性材料と傾斜機能材料の弾性行列についても講義する.また,弾性問題は,連立偏微分方程式の境界値問題に帰着するため,解を得る上での問題点とその解決方法についても学ぶ.さらに,既に学んでいる構造力学・材料力学は,三次元弾性論を出発点とし,その延長線上にある高度かつ実用的な学問であることについても説明する.

授業の進め方・方法:
まず,授業を通して基礎的な知識を修得する.次に,教科担当教員が作成した演習問題や教科書の章末問題などを解く.原則として,これを繰り返し行う.なお,授業担当教員が指名する学生は演習問題の答えを黒板に解答し,本科目を履修している学生に自身の考え方を説明する.その後,授業担当教員からのコメントを経て理解を深める.

(再試験について)
再試験は実施しない.

注意点:
(履修上の注意)
(1) 本授業は,本科で学んだ数学(偏微分,重積分,微分方程式,ベクトル解析,複素関数,Fourier解析など),物理系科目(基礎物理,解析力学など),材料力学(M科)および構造力学(C科)の基礎知識を踏まえて実施する.また,本授業では単に問題が解けることを目的とはしていないため,定義や基礎をきちんと身につけるように努めること.授業中にわからなくなったら積極的に質問すること.質問は歓迎する.また,こちらからも理解を促すような質問するように心掛けるので,間違いを気にせずに自分の考えを答えること.議論を交えながら理解を深めていくことを期待する.
(2) 授業時間外の質問も歓迎する.ALH等を利用して質問にくる際には,教科書と授業ノートを必ず持参すること.

(自学上の注意)
(1) 授業前に予習をし,授業後には十分な復習に努めること.
(2) 理解を深めるために,式の導出は各自で行うこと.
(3) 演習問題を通して理解を深めること.

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ガイダンス
荷重に対する物体の変形
応力とひずみの関係の基礎
(1) 授業計画と評価方法を理解できる.
(2) 作用する荷重に対する物体の変形を理解できる.
(3) 材料力学(M科),構造力学(C科)で学んだ応力とひずみの関係を復習する.これを理解できる.
2週 三次元弾性体の応力のつり合い方程式 (1) 応力ベクトルと応力テンソルの違いを理解できる.
(2) 微小直方体の各面に作用する応力成分を理解できる.
(3) 三次元弾性体の応力のつり合い方程式(平衡方程式)を導出し,これを理解できる(導出は演習にて各自が行う).
3週 Cauchyの式
座標変換による応力成分の変換
主応力と主軸
(1) Cauchyの式を理解できる.
(2) 座標変換による応力成分の変換を理解できる.
(3) 主応力と主軸を理解できる.
4週 三次元弾性体の変位とひずみの関係式 三次元弾性体の変位とひずみの関係式を理解できる.
5週 三次元弾性体の構成方程式 三次元弾性体の構成方程式を理解できる.
6週 応力とひずみの適合条件式 (1) 応力の適合条件式を理解できる.
(2) ひずみの適合条件式を理解できる.
7週 Navierの方程式と境界条件 (1) Navierの方程式を導出できる(導出は演習にて各自が行う).
(2) 弾性体の力学的境界条件と幾何学的境界条件を理解する.
8週 三次元弾性体の運動方程式
Helmholtz分解とポテンシャル関数
(1) 三次元弾性体の運動方程式とHelmholtz分解を紹介する.
(2) ポテンシャル関数の概念を理解できる.
(3) Papkovich-Neuberの変位関数とGalerkinベクトルを紹介する.
(4) 三次元のLaplace方程式の一般解の導出を復習する.
2ndQ
9週 弾性問題の解析方法と解の唯一性
Saint-Venantの原理
(1) 弾性問題の解析方法を理解できる.
(2) 弾性問題の解の唯一性を理解できる.
(3) 厳密解,解析解,数値解の違いを理解できる.
(4) Saint-Venantの原理を理解できる.
10週 外力仕事と内力仕事
三次元弾性体のひずみエネルギ密度関数とひずみエネルギ
表面力と物体力を受ける三次元弾性体の外力ポテンシャル
Clapeyronの定理
(1) 外力仕事と内力仕事を理解できる.
(2) 三次元弾性体のひずみエネルギ密度関数とひずみエネルギの関係を理解できる.
(3) 表面力と物体力を受ける三次元弾性体の外力ポテンシャルを理解できる.
(4) Clapeyronの定理を理解できる.
11週 仮想変位と仮想外力仕事
仮想内力仕事
三次元弾性体の仮想仕事の原理
(1) 仮想変位と仮想外力仕事を理解できる.
(2) 仮想内力仕事を理解できる.
(3) 三次元弾性体の仮想仕事の原理を理解できる.
12週 ポテンシャルエネルギ最小の原理
Rayleigh-Ritz法
有限要素法
(1) ポテンシャルエネルギ最小の原理を理解できる.
(2) ポテンシャルエネルギ最小の原理と仮想仕事のっ原理の関係を理解できる.
(3) ポテンシャルエネルギ最小の原理に基づいてRayleigh-Ritz法を紹介する.
(4) 仮想仕事の原理に基づいて有限要素法を紹介する.
13週 三次元弾性論と棒の引張理論 (1) 弾性基礎方程式にいくつかの仮定を設けることで棒の引張理論を導出できる.また,この仮定を理解できる.
(2) 三次元弾性体の仮想仕事の原理を用いて、棒の引張理論の応力の平衡方程式と境界条件を導出できる.
(3) 三次元弾性論と一次元または二次元の近似理論の関係を掴むことができる.
14週
棒の引張問題の厳密解・解析解
棒の引張問題のRitz解析
(1) 線部材の引張問題の厳密解・Fourier級数解を求め(演習),直線部材の引張変形挙動を数理的に理解できる.
(2) Rayleigh-Ritz法による棒の引張問題の解析に挑戦してみる.
15週 前期期末試験 1週から14週までの授業内容の理解度を確認するために定期試験を実施する.
16週 前期期末試験の解答と解説 分からなかった部分を把握し,それを理解することができる.

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週

評価割合

試験課題合計
総合評価割合7030100
基礎的能力20020
専門的能力503080
分野横断的能力000