概要:
地震動や強風を受ける建物の振動性状は、荷重が時間的に大きく変動する動的な作用のため、構造力学で対象とする静的な荷重の場合と異なり、同じ荷重が作用した場合でも非常に大きく振動する建物もあれば、振動が小さい建物もある。この違いを説明できるのが振動理論であり、この講義では1質点系及び多質点系の振動理論の基礎を習得することにより建物の振動性状を理解できるようになることを目的とする
授業の進め方・方法:
前半は1質点系モデルを対象にして振動理論の基礎について講義し、後半は多自由度系の振動について講義する。
15回の授業すべてを遠隔授業で行う。出席管理用のレポートと成績評価用のレポートを出題する。
注意点:
行列計算、微分方程式、応用物理(単振動・減衰)、応用数学(複素関数)の知識が関連するため、見直してから受講すること(この授業では解説しない)。
評価方法はレポート(Teams課題)を100%とし、総合評価で60%以上を合格とする。
講義資料はTeamsのチャネル「振動学」にアップロードされているので各自ダウンロードすること。
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
後期 |
3rdQ |
1週 |
授業計画の説明 構造物の様々な振動 1.静的荷重と動的荷重 2.運動方程式
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1)地震や強風による振動により構造物に被害が発生することを理解することができる。 2)静的荷重と動的荷重による最大応答の違いを知り、構造物の解析に振動理論が必要であることを理解することができる。 3)振動している建物の運動方程式が2階の微分方程式になることを理解することができる。
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2週 |
建物の力学モデルと運動方程式 1.ニュートンの運動方程式 2.振動する建物の解析モデル
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1)第1法則と第2法則および運動方程式について理解することがきる。 2)建物を解析する際の種々のモデルについて理解することができる。
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3週 |
1自由度系の自由振動 (1)非減衰の自由振動 1.振動と振動モード 2.自由振動と強制振動 3.1自由度非減衰系の自由振動 4.非減衰系の自由 振動の解 5.固有周期と固有円振動数 ⇒ |
1)振動現象と振動モードについて理解 することができる。 2)自由振動と強制振動の違い、減衰振動と非減衰振動の違いを理解することができる。 3)1 自由度非減衰系の自由 振動の運動方程式を理解することができる。 4)2 階の微分方程式から特殊解を導く手順を理解することができる。 5)固有周期と固有振動数の求め方を理解することができる。
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4週 |
1自由度系の自由振動 (2)減衰自由振動 1.減衰 2.粘性自由振動 3.減衰と振動 4.減衰系自由振動の解 5.等価減衰定数の推定
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1)減衰の減少、減衰する要因、粘性減衰について理解することができる。 2)粘性自由振動の運動方程式と解の導出について理解することができる。 3)特性方程式の解と振動、減衰定数、臨界減衰について理解することができる。 4)2階の微分方程式から特殊解を導く手順を理解することができる。 5)等価減衰定数の求め方を理解することができる。
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5週 |
調和荷重を受ける1自由度系の強制振動 (1)1自由度系の定常応答 1.1自由度の強制振動 2.定常応答と過渡応答 3.1自由度の定常応答
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1)強制振動について説明することができる。 2)強制振動が過渡応答と定常応答の和で表せることを 理解することができる。 3)調和荷重が作用する1自由度の定常応答を導出することができる。
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6週 |
調和荷重を受ける1自由度系の強制振動 (2)動的応答倍率 1.定常応答の振幅 2.動的応答倍率 3.周期荷重の定常応答
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1)動的応答倍率の定義式、静的変位と最大変位の関係を理解することができる。 2)動的応答倍率の特性、共振曲線について理解することができる。 3)位相遅れ角の定義を理解し、動的応答変位および位相遅れ角と振動数比の関係について説明することができる。
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7週 |
衝撃荷重を受ける1自由度系の強制振動(1) 1.強制振動の一般解 2.最大応答の近似解
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1)衝撃荷重の定義を理解し、種々の衝撃荷重が作用する場合の強制振動の一般解および最大応答を理解することができる。 2)インパルス応答関数を理解し、衝撃荷重が作用する場合の最大応答の近似解の解法ついて理解することができる。
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8週 |
衝撃荷重を受ける1自由度系の強制振動(2) 1.一般の荷重を受ける1自由度系の応答 2.数値積分 3.線形加速度法
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1)インパルス応答関数を用いて一般の荷重を受ける1自由度系の応答がデュアメルの積分方程式で表現できることを理解することができる。 2)デュアメルの積分を計算機を用いた数値積分法で解く方法について理解することができる。 3)線形加速度法の導出ができ、線形加速度法を用いて1自由度系の強制振動の応答を求める方法を理解することができる。
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4thQ |
9週 |
多自由度系の運動方程式(1) 1.建物の振動モデル 2.2自由度系の運動方程式 3.3自由度系の運動方程式
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1)多層建物の解析には、層毎に独立した振動が可能である多自由度系の力学モデルが適していることを理解し、N質点系のモデル(串団子モデル)について説明することができる。 2)2層建物の各層の変位を用いた2個の独立な運動方程式をたて、運動方程式がマトリックス表示できることを理解し、静的連成と動的連成について理解することができる。 3) 3自由度系の運動方程式をたてて運動方程式のマトリックス表示を行うことができる。
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10週 |
多自由度系の運動方程式(2) 1.多層建物の運動方程式 2.剛性マトリックスの特性 3.減衰マトリックスと質量マトリックスの特性 4.静的連成と動的連成の例
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1)せん断変形と曲げ変形の高層建物への影響を理解し、せん断型のモデルについて理解することができる。また、せん断型のモデルの剛性マトリックスが三重対角行列になることを理解することができる。 2)剛性影響係数、たわみ性マトリックス、たわみ性影響係数、Beetiの相反定理、Maxwellの相反定理を理解することができる。 3)減衰影響係数と質量影響係数を理解することができる。 4)座標の定義により剛性マトリックスや質量マトリックスが変わることをねじれ振動の例を用いて説明することができる。
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11週 |
多自由度系の自由振動 1.モードと一般座標 2.振動数方程式 3.自由振動の解 3.減衰マトリックスと質量マトリックスの特性
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1)モードと一般座標の説明ができる。 2)荷重が作用しない非減衰の運動方程式から振動方程式を導出することができる。 3)N自由度の振動数方程式からN個の固有周期と固有モードが求めることができる。 4)基本固有周期の説明ができる。
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12週 |
固有モードと基準座標(1) 1.固有モードの直交性 2.基準座標 |
1)固有モードの直交性について、振動数方程式を展開して理解することができる。 2)固有モードを用いた基準座標および展開定理について理解することができる。
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13週 |
固有モードと基準座標(2) 1.基準座標による自由振動 2.基準座標を用いた3自由度系の自由振動
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1)基準座標を用いることによりN自由度系の運動方程式がN 個の独立した微分方程式に分解でき、1自由度系の結果を利用できることを理解し、一般質量、一般粘性減衰係数、一般剛 性の定義について理解することができる。 2)3層建物が自由振動する時の応答を基準座標を用いて求め、基準座標を用いた自由振動の応答の解法について理解することができる。
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14週 |
多自由度系の強制振動(1) 1.多自由度系の強制振動 2.モード合成法
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1)固有モードの直交性を考慮して基準座標による独立な運動方式を導き、N次の連立微分方程式がN個の独立した運動方程式で記述されることを理解することができる。 2)多自由度系の応答がモードの合成により求める方法を理解することができる。 3)減衰マトリックスが直交性を満たす条件について理解することができる。 4)モード合成法の手順を理解し、3自由度系の建物に衝撃荷重が作用する場合の応答をモード合成法により求めることができる。
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15週 |
多自由度系の強制振動(2) 調和荷重が作用するときの定常応答 |
1)N層のk層のみに調和荷重が作用するときの定常応答 をモード合成法により導き、多自由度系に調和荷重が作用 するときの定常応答の解法を理解することができる。
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16週 |
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