概要:
複雑に見える生命現象も、原子や分子から構成される物質の相互作用により営まれている。本講義では、まず生物の基本構成成分である蛋白質、DNA、生体膜等の分子構造および熱力学、結合、酵素反応の基本を理解する。その後、どのような機構でエネルギー変換、形態形成、運動機能などの複雑な生命現象が機能するのか物理化学的に理解する。
授業の進め方・方法:
1)配布資料を中心に授業を進めます。
2)自己学習としては、授業中に配布したプリントや紹介図書などを熟読すること。
3)事後学習としての授業内容の課題問題は、オンラインクイズ形式で行います。
注意点:
1)本科で履修した生物化学、分子生物学および専攻科1年次で履修した蛋白質工学を十分に理解しておくこと。
2)復習に重点をおいて学習すること。
3)授業中に課題を課すので、その課題について調査し、期日までにレポート作成を行うこと。なお、課題は、自己学習の事後学習として評価する。
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
後期 |
3rdQ |
1週 |
授業計画・達成目標・成績の評価方法等の説明と序論(生気論と生物機械論) |
生物は機械のように物質の複合体であることを理解し、説明できる。
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2週 |
生物の基本構造1 |
蛋白質、核酸、糖鎖の構造について理解し、説明できる。
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3週 |
生物の基本構造2 |
脂質、細胞膜の構造について理解し、説明できる。
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4週 |
細胞運動1 |
細胞運動に関連したそれぞれの細胞骨格蛋白質について、その重合・脱重合の分子機構を理解し、説明できる。
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5週 |
細胞運動2 |
細胞運動や細胞構造に関連したそれぞれの細胞骨格蛋白質について、その重合・脱重合の分子機構を理解し、説明できる。
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6週 |
細胞運動3 |
細胞運動の全体像を物理化学的見地から理解し、説明できる。
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7週 |
生体分子モーター1 |
生体運動の一般論について説明できる。
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8週 |
生体分子モーター2 |
筋肉運動と細胞内輸送を生体分子モーターの観点から理解し、説明できる。
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4thQ |
9週 |
細胞運動や生体分子モーターに関する課題演習 |
細胞運動や生体分子モーターに関する具体的な事例について説明できる。
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10週 |
生物機能の物理化学(エネルギー代謝) |
生物の代謝をエネルギーの観点から理解し、説明できる。
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11週 |
生物機能の物理化学(酵素反応) |
Michaelis-Menten の式、Km、Vmax について理解し、説明できる。
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12週 |
生物機能の物理化学(結合1) |
Langmuir の結合等温式、Scatchard プロット、Hill プロットの概念を理解し、式を導くことができる。
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13週 |
生物機能の物理化学(結合2) |
Langmuir の結合等温式、Scatchard プロット、Hill プロットを理解し、それらの概念を説明できる。
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14週 |
生物機能の物理化学(熱力学概論) |
熱力学第2法則、エントロピー、自由エネルギー変化について理解し、説明できる。
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15週 |
演習問題 |
生物機能の物理化学に関する演習問題に取り組み、正しい解答を得ることができる。
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16週 |
修了試験 |
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分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
基礎的能力 | 自然科学 | 物理 | 熱 | 原子や分子の熱運動と絶対温度との関連について説明できる。 | 2 | |
エネルギーには多くの形態があり互いに変換できることを具体例を挙げて説明できる。 | 3 | |
不可逆変化について理解し、具体例を挙げることができる。 | 4 | |
化学(一般) | 化学(一般) | 物質を構成する分子・原子が常に運動していることが説明できる。 | 2 | |
イオン結合について説明できる。 | 4 | |
共有結合について説明できる。 | 2 | |
酸・塩基の定義(ブレンステッドまで)を説明できる。 | 2 | |
電離度から酸・塩基の強弱を説明できる。 | 3 | |
pHを説明でき、pHから水素イオン濃度を計算できる。また、水素イオン濃度をpHに変換できる。 | 3 | |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 化学・生物系分野 | 有機化学 | 有機物が炭素骨格を持つ化合物であることを説明できる。 | 3 | |
分子の三次元的な構造がイメージでき、異性体について説明できる。 | 3 | |
構造異性体、シスートランス異性体、鏡像異性体などを説明できる。 | 3 | |
代表的な官能基に関して、その構造および性質を説明できる。 | 2 | |
高分子化合物がどのようなものか説明できる。 | 4 | |
代表的な高分子化合物の種類と、その性質について説明できる。 | 4 | |
高分子の分子量、一次構造から高次構造、および構造から発現する性質を説明できる。 | 4 | |
重合反応について説明できる。 | 2 | |
基礎生物 | 原核生物と真核生物の違いについて説明できる。 | 3 | |
代謝、異化、同化という語を理解しており、生命活動のエネルギーの通貨としてのATPの役割について説明できる。 | 4 | |
酵素とは何か説明でき、代謝における酵素の役割を説明できる。 | 3 | |
DNAの構造について遺伝情報と結びつけて説明できる。 | 2 | |
遺伝情報とタンパク質の関係について説明できる。 | 2 | |
細胞膜を通しての物質輸送による細胞の恒常性について説明できる。 | 4 | |
生物化学 | タンパク質、核酸、多糖がそれぞれモノマーによって構成されていることを説明できる。 | 4 | |
生体物質にとって重要な弱い化学結合(水素結合、イオン結合、疎水性相互作用など)を説明できる。 | 4 | |
単糖と多糖の生物機能を説明できる。 | 3 | |
単糖の化学構造を説明でき、各種の異性体について説明できる。 | 3 | |
グリコシド結合を説明できる。 | 3 | |
多糖の例を説明できる。 | 2 | |
脂質の機能を複数あげることができる。 | 3 | |
トリアシルグリセロールの構造を説明できる。脂肪酸の構造を説明できる。 | 3 | |
リン脂質が作るミセル、脂質二重層について説明でき、生体膜の化学的性質を説明できる。 | 2 | |
タンパク質の機能をあげることができ、タンパク質が生命活動の中心であることを説明できる。 | 4 | |
タンパク質を構成するアミノ酸をあげ、それらの側鎖の特徴を説明できる。 | 2 | |
アミノ酸の構造とペプチド結合の形成について構造式を用いて説明できる。 | 2 | |
タンパク質の高次構造について説明できる。 | 4 | |
ヌクレオチドの構造を説明できる。 | 2 | |
DNAの二重らせん構造、塩基の相補的結合を説明できる。 | 2 | |
コドンについて説明でき、転写と翻訳の概要を説明できる。 | 2 | |
酵素の構造と酵素-基質複合体について説明できる。 | 2 | |
酵素の性質(基質特異性、最適温度、最適pH、基質濃度)について説明できる。 | 2 | |
補酵素や補欠因子の働きを例示できる。水溶性ビタミンとの関係を説明できる。 | 2 | |
解糖系の概要を説明できる。 | 3 | |
クエン酸回路の概要を説明できる。 | 3 | |
酸化的リン酸化過程におけるATPの合成を説明できる。 | 3 | |
嫌気呼吸(アルコール発酵・乳酸発酵)の過程を説明できる。 | 2 | |
分野横断的能力 | 汎用的技能 | 汎用的技能 | 汎用的技能 | 円滑なコミュニケーションのために図表を用意できる。 | 4 | |
書籍、インターネット、アンケート等により必要な情報を適切に収集することができる。 | 4 | |
収集した情報の取捨選択・整理・分類などにより、活用すべき情報を選択できる。 | 4 | |
収集した情報源や引用元などの信頼性・正確性に配慮する必要があることを知っている。 | 4 | |
情報発信にあたっては、個人情報および著作権への配慮が必要であることを知っている。 | 2 | |
目的や対象者に応じて適切なツールや手法を用いて正しく情報発信(プレゼンテーション)できる。 | 4 | |