電磁気学Ⅱ

科目基礎情報

学校 鹿児島工業高等専門学校 開講年度 令和06年度 (2024年度)
授業科目 電磁気学Ⅱ
科目番号 2113 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 履修単位: 1
開設学科 電気電子工学科 対象学年 3
開設期 後期 週時間数 2
教科書/教材 大貫繁雄、安立三郎「電気磁気学(第2版)新装版」(森北出版)
担当教員 佐藤 正知

到達目標

1.複数の導体が空間にある場合(導体系)、それぞれの導体の電荷と電位の関係が電位係数、容量・誘導係数で表されることを説明でき、
  それを応用できる。
2.代表的な導体系における静電容量を求めることができる。
3.静電エネルギーの考え方を説明でき、計算できる。
4.誘電体における分極現象、誘電率、電束密度の定義と考え方を身に着け、誘電体入キャパシタの静電容量を計算できる。
5.誘電体境界面における電界と電束密度の性質を理解し、複数種類の誘電体がある場合の電界と電位差、静電容量を計算できる。
6.電流の定義から金属においてオームの法則が成立つこと、平均速度、移動度と導電率の関係等を説明できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1 標準的な到達レベルに加えて、以下のことができる。 1)電位の重ねの理から電位係数の考え方を導き、応用することができる。 2)電位係数を同心球導体の接地、点電荷と導体球の関係などへ応用できる。1)同心球導体に任意の電荷を与えた場合の電界をガウスの法則より求めることができる。  2)同心球導体の外球、内球それぞれの電位を電界から求めることができ、電荷と電位の関係を行列で表現できる。 3)電位係数と容量係数・誘導係数の関係を説明できる。 4)静電遮蔽(シールド)、接地について説明できる。電気力線の意味と性質、導体の性質を十分に理解して、様々な導体系において電気力線の予想図を描くことができない。また、電界におけるガウスの法則の意味を十分に理解していない。
評価項目2標準的な到達レベルに加えて、複雑なキャパシタの接続の場合の合成容量を計算できる。1)静電容量の定義(導体間、孤立導体)を説明できる。 2)同心球導体、同軸円筒導体、平行導線間、平行平板などの導体間の電界をガウスの法則より求め、電位差を求め、静電容量を導くことができる。 3)キャパシタの並列、直列接続時の合成容量の式を導くことができる。同心球導体の内外導体に任意の電荷が与えられた時の、外導体、内外導体間の静電容量を求めることができない。
評価項目3標準的な到達レベルに加えて、複数のキャパシタを用いた問題において静電エネルギーを計算することができる。平行平板キャパシタを充電するのに必要なエネルギーの式を導出でき、これより空間に蓄えられる静電エネルギーを説明できる。電気エネルギー(電源のする仕事)の概念を十分に理解していない。
評価項目4標準的な到達レベルに加えて、誘電体中にある平行導線間の静電容量を求めることができる。1)分極現象と分極密度、分極電荷を理解し、平行平板導体間に誘電体があるモデルからD=ε0E+Pを導くことができる。 2)χ, εr, εの名称とこれらの関係からD=εEを導くことができる。 3)電束密度のガウスの法則を応用して誘電体の入ったキャパシタの静電容量を求めることができる。平行平板導体間に誘電体があるモデルからD=ε0E+Pを導くことができない。また、誘電体が存在する場合は原則として電束密度のガウスの法則を用いなければならないことを理解できない。
評価項目5標準的な到達レベルに加えて、誘電体境界面にある導体球等の応用問題を解くことができる。 1)電束密度の法線成分が連続、電界の接線成分が連続であることを理解し、応用できる。 2)2種の誘電体が重なって/隣り合わせに入ったキャパシタ内の電束密度、電界、静電容量を導出できる。境界面における電界と電束密度の性質の応用として、電気力線の屈折の法則を導くことができない。
評価項目6標準的な到達レベルに加えて、以下のことができる。 1)自由電子の運動を平均化した電気伝導モデルによりジュール熱を説明できる。 2)抵抗温度係数の定義を理解し、抵抗値を計算できる。1)電流の定義I=dQ/dtとI=envSの関係、移動度を説明できる。 2)自由電子の運動を平均化したモデルによりオームの法則の説明ができる。 3)温度による導体の抵抗変化を説明できる。自由電子の格子原子への衝突、加速のモデルから平均速度の考え方、オームの法則を導くことが出来ない。

学科の到達目標項目との関係

本科(準学士課程)の学習・教育到達目標 3-a 説明 閉じる
本科(準学士課程)の学習・教育到達目標 3-c 説明 閉じる

教育方法等

概要:
前期の電磁気学Ⅰに続き、静電界の後半にあたる導体系の電荷と電位差から静電容量の導出、誘電体の取り扱い、さらに定常電流までを学習する。ベクトル解析等の高度な数学表現は用いず、力線の概念とそのベクトルによる表現、そして球体、円筒など簡単なモデルから電磁気学理論における基本的考え方を身に着け、最終的には、実用に関係する各種モデルにおける電界、電位、静電容量、エネルギー等を導き出だせるようになることを目標とする。
授業の進め方・方法:
単に数式を記憶するのではなく、モデルから数式を導き出す力を養うことが目標である。最終的には各種演習問題を自力で解答できるようにする。授業中にその内容を理解するために、必ず予習を行うこと。授業中の演習問題をその場で考えて解くことが大事である。なお適宜小テストを行う。
注意点:
力線の性質を理解し、電界についてのイメージを持つことがまず大切であり、そのためには図をきちんと書くこと。各種計算では数式を記憶するのではなく図との関係を理解すること。ある程度の定積分の計算力が求められる。理解が不十分な問題は復習として必ず自分で解くことを怠らぬこと。評価の「その他」は授業に対する貢献を点数化し、問題の作成や定期試験の解答動画の作成などで採点する。また、最初の講義で小テスト・課題を成績に考慮せず、試験の成績割合を90%(小テスト・課題は0%)とすることを選択可能である。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
後期
3rdQ
1週 電位係数、容量・誘導係数、重ねの理 □ 帯電導体の性質から電気力線を描くことができる。またガウスの法則を用いて電界の計算ができる。
2週 電位係数、容量・誘導係数、重ねの理 □ 同心球導体など、導体系の電荷と電位の関係を行列で表現できる。
□ 電位係数と容量係数・誘導係数の関係を説明できる。
3週 電位係数、容量・誘導係数、重ねの理 □ 同心球導体の接地、点電荷と導体球の関係などへ応用できる。
□ 電位の重ねの理を説明できる。
□ 誘導電荷と静電遮へいを説明できる。
4週 静電容量 □ 静電容量の定義を説明できる。
5週 静電容量 □ 平行平板、同心球、同軸円筒導体、平行導線などの静電容量を計算できる。
6週 静電容量 □ キャパシタの並列、直列接続の合成容量の式を導出できる。
7週 静電エネルギー □ 平行平板キャパシタを充電するのに必要なエネルギーの式を導出でき、空間に蓄えられる静電エネルギーを説明できる。
8週 中間試験
4thQ
9週 誘電体(分極現象、誘電率、電束密度) □ 分極現象、電気双極子モーメントと分極の関係、電界、電束密度、分極の関係を説明できる。
□ 電気感受率、比誘電率の関係を説明できる。
10週 誘電体と静電容量 □ 電束密度のガウスの法則を説明できる。
□ 誘電体が入った場合の静電容量を計算できる。
11週 誘電体界面の現象 □ 電束密度の法線成分が連続、電界の接線成分が連続であることを理解し、応用できる。
12週 誘電体界面の現象 □ 2種の誘電体が重なって/隣り合わせに入ったキャパシタ内の電束密度、電界、静電容量を導出できる。
13週 電流とオームの法則 □ 電流の定義I = dQ/dtと電子の移動からの電流I = envSの考え方、移動度との関係を説明できる。
□ 1粒子に平均化したモデルによるオームの法則、電流密度・導電率・電界の関係を説明できる。
14週 電流とオームの法則 □ 1粒子平均化モデルによるジュール熱を説明できる。
□ 抵抗温度係数の定義を理解し、抵抗値を計算できる。
15週 試験答案の返却・解説 試験において間違った部分を自分の課題として把握する(非評価項目)。
16週

評価割合

試験小テスト・課題その他合計
総合評価割合603010100
基礎的能力0000
専門的能力6030090
分野横断的能力001010