電磁気学Ⅲ

科目基礎情報

学校 鹿児島工業高等専門学校 開講年度 平成30年度 (2018年度)
授業科目 電磁気学Ⅲ
科目番号 0038 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 学修単位: 1
開設学科 電気電子工学科 対象学年 4
開設期 前期 週時間数 前期:2
教科書/教材 安立三郎、大貫繁雄「電磁気学」(森北出版)
担当教員 須田 隆夫

到達目標

以下の5つの到達目標を評価項目とする。
1.電流による磁界の発生の定性的性質を説明でき、ビオ・サバールの法則、アンペア周回積分の法則を理解し、それらを用いて各種の磁界を計算できる。
2.磁力線の性質、磁束、磁束密度を説明でき、電磁力の原理から電流間に働く力、ループ電流に働くトルクを求めることができる。また、モーターの原理を説明できる。
3.電磁誘導の法則を理解し、自己誘導、相互誘導、交流発電機、運動電磁誘導について説明できる。
4.自己インダクタンスの定義を理解し、環状ソレノイドや平行導線などの自己インダクタンスを計算出来る。また、相互インダクタンスの定義を理解し環状ソレノイド等の簡単な相互インダクタンスを計算出来る。さらにインダクタンスの接続による合成インダクタンスの計算ができる。
5.インダクタに蓄えられるエネルギーから電磁エネルギーを説明でき、インダクタンス計算への応用さらにエネルギーと力の関係から、コイルに働く力を計算出来る。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1標準的な到達レベルに加え、 ・ビオ・サバールの法則を用いた直線電流(有限長)による磁界を計算できる。 ・アンペア周回積分を用いて平板電流による磁界や、中空付円筒導体内の磁界を計算できる。□ 電流により生じる磁界(アンペア右ねじの法則)を説明できる。 □ 磁気双極子モーメントを理解し、円電流が磁気双極子と等価であることを説明できる。 □ ビオ・サバールの法則を説明できる。またそれを用いた円電流による磁界を計算できる。 □ アンペア周回積分の意味を理解し、無限長直線電流の作る磁界、環状ソレノイド・無限長円筒ソレノイド内部の磁界、平行(往復)直線電流の作る磁界、円筒導体内部の磁界を計算できる。 ビオ・サバールの法則を用いて円電流による磁界の計算ができない。また、アンペア周回積分の法則を利用して環状ソレノイド内の磁界等の計算ができない。
評価項目2標準的な到達レベルに加え、 ・xy平面で面積分を用いて鎖交磁束を計算できる。 ・ローレンツ力によるサイクロトロン運動が説明できる。□ 透磁率の定義と単位、磁束の意味、磁束密度のガウスの法則を理解し、開曲面を通過する磁束の計算ができる。 □ 磁力線の重ね合わせにより磁界中の電流に働く力を定性的に説明できる。 □ 平行電流に働く力、ローレンツ力を計算出来る。 □ 直流モータの原理を説明でき、磁界中のループ電流、磁気双極子に働くトルクを計算できる。磁束と磁束密度の関係を説明できない。また、電磁力を用いたモーターの原理などの説明ができない。
評価項目3標準的な到達レベルに加え、 ・発電に要するエネルギーと負荷の消費電力が等しいことを説明できる。 ・単極発電の原理、およびローレンツ力による運動電磁誘導の説明できる。□ 「鎖交」することの意味、ファラデーの法則、レンツの法則を説明できる。 □ e=-dΦ/dtのΦとeの方向の定義を理解し、問題に応用できる。 □ 自己誘導と相互誘導を理解し、回路の誘導起電力(e.m.f)を計算できる。 □ 交流発電機の原理を理解し、発電機に負荷が接続された場合に発生する電磁力と回転に要するトルクを計算できる。 □ 電磁誘導と運動電磁誘導の関係を説明できる。 自己誘導、相互誘導において、e=-dΦ/dtのΦとeの方向を正しく応用できない。交流発電の原理を説明できない。
評価項目4標準的な到達レベルに加え、 ・円筒導体の内部インダクタンスを計算できる。 ・有限長円筒ソレノイドの自己インダクタンスの計算方法を説明でき、長岡係数との関係を説明できる。 ・ 電気回路における相互インダクタンスの取り扱いと、等価回路を説明できる。□ 自己インダクタンスの定義を理解し、計算例(環状ソレノイド、無限長円筒ソレノイド)を計算できる。 □ 平行導線、同軸円筒導体の外部インダクタンスを計算できる。 □ 相互インダクタンスの定義を理解し、環状ソレノイド、無限長円筒ソレノイドの場合の計算ができる。 □ 直列接続および並列接続の合成インダクタンスの式の意味を説明できる。環状ソレノイド、無限長円筒ソレノイド、平行導線、同軸円筒導体の外部インダクタンス等を計算できない。
評価項目5標準的な到達レベルに加え、相互インダクタンスを持つコイルのエネルギーからコイル間に働く力を計算できる。□ コイルに電流を流すのに要するエネルギーから空間に蓄えられるエネルギーを導出できる。 □ インダクタンスに蓄えられるエネルギーとの関係から円筒導体の内部インダクタンスを計算できる。 □ 仮想変位によるソレノイドの導線に働く力を計算できる。コイルに電流を流すのに要するエネルギーを導出できない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
 3年次の電磁気学Ⅰ、Ⅱの続編として電流磁界、電磁誘導、インダクタンスを学習し、静電界からスタートした電磁気学の基礎部分の学習が完結する。教科書では静磁界(電流磁界)の後に磁性体が配置されているが、本講義ではとりあげない。磁性体は電磁波と合わせて、後期の電磁気学Ⅳで学習する。
授業の進め方・方法:
 力線の性質を理解し、磁界についての定性的なイメージを持つことがまず大事である。基本法則は単に数式を記憶するのではなく、物理的な意味を理解する。そして基本法則からモデルに合わせて微分・積分を使いこなせるようになること。特に微小要素dIから生じるdH,それを積分して磁界を導くといった考え方と定積分の計算力が必要である。授業ごとに必ず予習を行い、授業内容を確実に理解すること。特に授業中の演習を自分の力で解くことが重要である。理解が不十分な問題は復習として必ず自分で解くこと。基礎的な問題の小テストを10回程度実施する。
注意点:
学修単位〔講義Ⅰ]の科目であるので、1回の授業に対して、1時間の自学自習が必要である。
中間試験を実施する(7週目後)。
期末試験は14週目の後である。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 電流磁界 □ 電流により生じる磁界(アンペア右ねじの法則)を説明できる。
□ 磁気双極子モーメントを理解し、円電流が磁気双極子と等価であることを説明できる。
2週 電流磁界 □ ビオ・サバールの法則を説明できる。またそれを用いた円電流、直線電流(有限長)による磁界を計算できる。
3週 電流磁界 □ アンペア周回積分の意味を理解し、無限長直線電流の作る磁界、環状ソレノイド・無限長円筒ソレノイド内部の磁界、平行(往復)直線電流の作る磁界、円筒導体内部の磁界を計算できる。
4週 磁束と磁束密度 □ 透磁率の定義と単位、磁束の意味、磁束密度のガウスの法則を理解し、磁束の計算ができる。
□ 直線電流による磁界の矩形ループの鎖交磁束を導出できる。
5週 電磁力 □ 磁力線の重ね合わせにより磁界中の電流に働く力を定性的に説明できる。
□ 平行電流に働く力、ローレンツ力、直流モータの原理、磁気双極子とループ電流に働くトルクを計算できる。
6週 電磁誘導の法則 □ 「鎖交」することの意味、ファラデーの法則、レンツの法則を説明できる。
□ e=-dφ/dtのφとeの方向の定義を理解し、問題に応用できる。
7週 自己誘導と相互誘導 □ 自己誘導と相互誘導を理解し、回路の誘導起電力(e.m.f)を計算できる。
8週 交流の発生 □ 交流発電機の原理を理解し、発電機に負荷が接続された場合に発生する電磁力と回転に要するトルクを計算できる。
2ndQ
9週 運動電磁誘導 □ 電磁誘導と運動電磁誘導の関係を説明できる。
□ 単極発電の原理、およびローレンツ力による運動電磁誘導の説明できる。
10週 自己インダクタンス □ 自己インダクタンスの定義を理解し、計算例(環状ソレノイド、無限長円筒ソレノイド)を計算できる。
11週 自己インダクタンス □ 平行導線、同軸円筒導体の外部インダクタンスを説明できる。
□ 円筒導体の内部インダクタンスを計算できる。
□ 有限長円筒ソレノイドの自己インダクタンス計算の考え方と長岡係数との関係を説明できる。
12週 相互インダクタンス □ 相互インダクタンスの定義を理解し、環状ソレノイド、無限長円筒ソレノイドの場合の計算ができる。
□ 直列接続および並列接続の合成インダクタンスを計算できる。
□ 電気回路における相互インダクタンスの取り扱いと、等価回路を説明できる。
13週 電磁エネルギー □ コイルに電流を流すのに要するエネルギーから空間に蓄えられるエネルギーを導出できる。
□ インダクタンスに蓄えられるエネルギーとの関係から円筒導体の内部インダクタンスを計算できる。
14週 電磁エネルギー □ 仮想変位によりソレノイドの導線に働く力や相互インダクタンスのコイル間に働く力を計算できる。
15週 試験答案の返却・解説 試験において間違った部分を自分の課題として把握する(非評価項目)
16週

評価割合

試験小テスト等相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合70300000100
基礎的能力0000000
専門的能力70300000100
分野横断的能力0000000