電気回路Ⅲ

科目基礎情報

学校 鹿児島工業高等専門学校 開講年度 平成31年度 (2019年度)
授業科目 電気回路Ⅲ
科目番号 0045 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 履修単位: 1
開設学科 電気電子工学科 対象学年 2
開設期 前期 週時間数 2
教科書/教材 平山博,大附辰夫「電気学会大学講座 電気回路論 (3版改訂)」 (オーム社) / 平山博,大附辰夫「電気学会大学講座 電気回路論問題演習詳解」 (オーム社)
担当教員 屋地 康平

到達目標

正弦波電圧を3種類の素子(抵抗・インダンクタンス・キャパシタンス素子)からなる回路に加えたときの定常状態を,三角関数を用いて表現できます.交流電圧と電流を複素数で表し,直流における抵抗(実数値)を,交流ではインピーダンス(複素数値)として扱い,交流回路の定常状態の問題が複素数の四則演算に帰着されます.これにより,交流回路のさまざまな現象を複素数の四則演算にもとづいて解析することができます.

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1標準的な到達レベルに加え, □抵抗・誘導リアクタンス・容量リアクタンスによるエネルギーは,抵抗素子ではジュール熱として散逸し,インダクタンス素子では磁気エネルギーとして,静電容量素子では静電エネルギーとして蓄積・放出して散逸しないことを説明できる.□抵抗素子・インダクタンス素子・静電容量素子の端子間の電圧と電流の瞬時値の関係を式で表現でき,電圧と電流の位相関係を説明することができる. □抵抗・誘導リアクタンス・容量リアクタンスによる電力の瞬時値・最大値・平均値を求めることができる.□抵抗素子・インダクタンス素子・静電容量素子の端子間の電圧と電流の瞬時値の関係を式で表現できない.電圧と電流の位相関係を説明することができない. □抵抗・誘導リアクタンス・容量リアクタンスによる電力の瞬時値・最大値・平均値を求めることができない.
評価項目2標準的な到達レベルに加え, □回路方程式の解,すなわち電流は,一意的に定まる正弦波定常解を持つことを説明できる.□抵抗R・インダンタンスL・静電容量Cを直列に接続して正弦波交流電圧を加えたときの回路方程式を立てることができる.またこのときの回路のインピーダンス,ならびに電圧と電流の位相差を求めることができる.□抵抗R・インダンタンスL・静電容量Cを直列に接続して正弦波交流電圧を加えたときの回路方程式を立てることができない.回路のインピーダンス,ならびに電圧と電流の位相差を求めることができない.
評価項目3標準的な到達レベルに加え, □無効電力の工学的な意味を,力率の調整の観点から説明できる.また,数理的な意味を,有効電力と無効電力が直交系をなす観点から説明できる.□RLC直列回路の瞬時電力を求め,その結果を用いて有効電力と無効電力,ならびに力率を求めることができる. □有効電力・無効電力・皮相電力と力率の関係を説明することができる.□RLC直列回路の瞬時電力を求めることができない.瞬時電力から有効電力と無効電力,ならびに力率を求めることができない. □有効電力・無効電力・皮相電力と力率の関係を説明することができない.
評価項目4標準的な到達レベルに加え, □RLC回路の微分方程式を解く問題が,定常状態では複素数の代数方程式を解く問題に帰着されることを説明できる. □複素数の構成と表記法,ならびに複素数平面に関する数学的概念を理解し,これに「フェーザ」の考え方を加えた電気工学的な概念を説明できる.□複素電圧・複素電流・インピーダンスを用いて簡単な回路の解析を行うことができる. □抵抗・リアクタンス・インピーダンス,ならびにコンダクタンス・サセプタンス・アドミタンスの関係を理解し,これらを自由に扱うことができる. □簡単な回路の各部の電力を複素数表示で求めることができる.□複素電圧・複素電流・インピーダンスを用いて簡単な回路の解析を行うことができない. □抵抗・リアクタンス・インピーダンス,ならびにコンダクタンス・サセプタンス・アドミタンスの関係を理解できない.これらを自由に扱うことができない. □簡単な回路の各部の電力を複素数表示で求めることができない.
評価項目5標準的な到達レベルに加え, □数学における矢線ベクトルの考え方を正弦波電圧と電流に適用し,かつ複素数平面において利用すれば,電圧・電流・電力・インピーダンス・アドミタンスを矢線ベクトルで描けることを説明できる.□電圧または電流を基準ベクトルにとり,様々な回路についてベクトル図を図示することができる. □複素数平面上の点が移動するとき,これらの矢線ベクトルがベクトル軌跡を描くことを理解し,簡単な回路のインピーダンスとアドミタンスについてベクトル軌跡を図示することができる.□電圧または電流を基準ベクトルにとり,様々な回路についてベクトル図を図示することができない. □複素数平面上の点が移動するとき,これらの矢線ベクトルがベクトル軌跡を描くことを理解できない.簡単な回路のインピーダンスとアドミタンスについてベクトル軌跡を図示できない.
評価項目6標準的な到達レベルに加え, □直列共振と並列共振の違いを,リアクタンスの挙動に着目して数理的に説明できる.□簡単なRL直列回路とRL並列回路,ならびにRC直列回路とRC並列回路において,減衰定数を求めることができる.またこのときのインピーダンスまたはアドミタンスのベクトル軌跡を描くことができる. □簡単なRLC直列回路とRLC並列回路において,共振周波数・共振の鋭さを求めることができる.□簡単なRL直列回路とRL並列回路,ならびにRC直列回路とRC並列回路において,減衰定数を求めることができない.インピーダンスまたはアドミタンスのベクトル軌跡を描くことができない. □簡単なRLC直列回路とRLC並列回路において,共振周波数・共振の鋭さを求めることができない.
評価項目7標準的な到達レベルに加え, □複素数演算とKCLとKVLを用いて簡単な交流回路のほとんどについて定常状態解析ができる.□既知のインピーダンスまたはアドミタンスを直並列接続した簡単な直並列回路の合成インピーダンスと合成アドミタンスを求めることができる.□既知のインピーダンスまたはアドミタンスを直並列接続した簡単な直並列回路の合成インピーダンスと合成アドミタンスを求めることができない.
評価項目8標準的な到達レベルに加え, □ヘビサイドのブリッジ回路の平衡条件を求めることができる.□簡単なブリッジ回路の平衡条件を求めることができる.□簡単なブリッジ回路の平衡条件を求めることができない.

学科の到達目標項目との関係

本科(準学士課程)の学習・教育到達目標 3-c 説明 閉じる

教育方法等

概要:
各種交流の中でも,正弦波交流は,商用電源を用いるすべての回路・機器を解析する上で不可欠であり,電気工学の広い分野に応用されています.「電気回路Ⅲ」では,電気回路Ⅰ,Ⅱの続編として,「交流電圧・電流・電力」,「交流回路の複素計算法」,ならびにいくつかの代表的な直並列回路の解析法について学習します.
具体的には,正弦波交流電圧源を4種類の素子(抵抗・インダンクタンス・キャパシタンス素子)からなる回路に加えたときの定常状態を,三角関数を用いて表現する手法を学習します.交流電圧と電流を複素数で表し,直流における抵抗(実数値)を,交流ではインピーダンス(複素数値)として扱い,交流回路の定常状態の問題が複素数の四則演算に帰着されます.これにより,交流回路のさまざまな現象を複素数の四則演算にもとづいて解析することができます.
「電気回路Ⅲ」で取り扱う内容は,実はすべて,集中定数,かつ線形時不変の回路という前提を含んでいますが,この点は暗黙の了解事項とします.この点については,2年後期の「電気回路Ⅳ」で扱う一般線形回路理論にて説明されます.
授業の進め方・方法:
基本的にはテキスト「電気回路論」に沿って標準的な内容を授業するが,一部の内容は省略します.
受講に当たって,複素数の四則演算をマスターしておいてください.
宿題を課すことがあります.
理解状況を把握するため,別冊「問題演習詳解」の中から問題を選んで試験することがあります.
中間試験・期末試験とも実施します.
注意点:
理論の論旨,定理の意味など電気回路の根幹をなす部分については,できるだけ授業中に理解するようにしてください.
定期試験を受験するに当たっては,少なくとも別冊「問題演習詳解」は解けるようにしておいてください.
解らない点はできるだけ授業中に質問してください(あなたが難しいと感じた点は,他の人も同じように感じている可能性が高いと思います).

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 1−1.2章「交流電圧・電流・電力」へのガイダンス
1−2.抵抗素子・インダクタンス素子・静電容量素子の交流特性
□各種交流の中でも,正弦波交流は,商用電源を用いるすべての回路・機器を解析する上で不可欠であり,電気工学の広い分野に応用されることを理解できる.
□抵抗素子・インダクタンス素子・静電容量素子の端子間の電圧と電流の瞬時値の関係を式で表現でき,電圧と電流の位相関係を説明することができる.
□抵抗・誘導リアクタンス・容量リアクタンスによる電力の瞬時値・最大値・平均値を求めることができる.
2週 1−3.RLC直列回路の交流特性 □抵抗R・インダンタンスL・静電容量Cを直列に接続して正弦波交流電圧を加えたときの回路方程式を立てることができる.このとき,電流は,一意的に定まる正弦波定常解を持つことを説明できる.またこのときの回路のインピーダンス,ならびに電圧と電流の位相差を求めることができる.
3週 1−4.正弦波電圧・電流と電力 □RLC直列回路の瞬時電力を求め,その結果を用いて有効電力と無効電力,ならびに力率を求めることができる.
□有効電力・無効電力・皮相電力と力率の関係を説明することができる.
4週 2−1.3章「交流回路の複素計算法」へのガイダンス
2−2.正弦波の複素数表示
□RLC回路の微分方程式を解く問題が,定常状態では複素数の代数方程式を解く問題に帰着されることを説明できる.
□複素数の構成と表記法,ならびに複素数平面に関する数学的概念を理解し,これに「フェーザ」の考え方を加えた電気工学的な概念を説明できる.
5週 2−3.インピーダンスとアドミタンス □複素電圧・複素電流・インピーダンスを用いて簡単な回路の解析を行うことができる.
□抵抗・リアクタンス・インピーダンス,ならびにコンダクタンス・サセプタンス・アドミタンスの関係を理解し,これらを自由に扱うことができる.
6週 2−4.電力の複素数表示 □簡単な回路の各部の電力を複素数表示で求めることができる.
7週 演習 □ここまでの内容の標準的な問題を解くことができる.
8週 2−5.ベクトル図
2−6.ベクトル軌跡
□数学における矢線ベクトルの考え方を正弦波電圧と電流に適用し,かつ複素数平面において利用すれば,電圧・電流・電力・インピーダンス・アドミタンスを矢線ベクトルで描けることを説明できる.
□電圧または電流を基準ベクトルにとり,様々な回路についてベクトル図を図示することができる.
□複素数平面上の点が移動するとき,これらの矢線ベクトルがベクトル軌跡を描くことを理解し,簡単な回路のインピーダンスとアドミタンスについてベクトル軌跡を図示することができる.
2ndQ
9週 3−1.4章「交流回路」へのガイダンス
3−2.交流回路の基礎
3−3.直列回路と並列回路
□前章で,正弦波交流の定常状態の解析は,複素数の代数方程式を解く問題に帰着されたことを念頭に,この複素数演算とキルヒホッフの電流則(KCL)と電圧則(KVL)を用いることで,簡単な直列回路と並列回路の合成インピーダンスと合成アドミタンスを求めることができる.
10週 3−4.RL直列回路とRL並列回路
3−5.RC直列回路とRC並列回路
□RL直列回路とRL並列回路,ならびにRC直列回路とRC並列回路において,減衰定数の考え方とdB量の大きさを理解し,簡単な回路において減衰定数を求めることができる.またこのときのインピーダンスまたはアドミタンスのベクトル軌跡を描くことができる.
11週 3−6.RLC直列回路とRLC並列回路 □直列共振と並列共振の違いを,リアクタンスの挙動に着目して数理的に理解し,簡単なRLC直列回路とRLC並列回路において,共振周波数・共振の鋭さを求めることができる.
12週 3−7.直並列回路
3−8.はしご形回路
□既知のインピーダンスまたはアドミタンスを直並列接続した簡単な直並列回路の合成インピーダンスと合成アドミタンスを求めることができる.複素数演算とKCLとKVLを用いて簡単な交流回路のほとんどについて定常状態解析ができる.
□連分数展開を用いてはしご形回路のインピーダンスを求めることができる.
13週 3−9.相互誘導回路
3−10.ブリッジ回路
□相互誘導回路・自己インダクタンス・相互インダクタンスの概要を物理的・数理的両面で理解し,一次側と二次側の回路方程式を立て,一次側と二次側の電流・全消費電力を求めることができる.
□相互誘導回路のT型等価回路を描き,漏れインダクタンスを求めることができる.
□簡単なブリッジ回路の平衡条件を求めることができる.
14週 演習 □ここまでの内容の標準的な問題を解くことができる.
15週 試験答案の返却・解説 □試験において間違った部分を自分の課題として把握する(非評価項目).
16週

評価割合

試験小テスト・レポート相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合75250000100
基礎的能力0000000
専門的能力75250000100
分野横断的能力0000000