電気電子材料

科目基礎情報

学校 鹿児島工業高等専門学校 開講年度 平成30年度 (2018年度)
授業科目 電気電子材料
科目番号 0051 科目区分 専門 / 選択
授業形態 講義 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 電気電子工学科 対象学年 5
開設期 後期 週時間数 2
教科書/教材 浜口智尋・森伸也「電子物性―電子デバイスの基礎」(朝倉書店) / 川辺・平木・岩見著「基礎電子物性工学」(コロナ社), 一ノ瀬昇著「電気電子機能材料」(オーム社) など
担当教員 須田 隆夫

到達目標

1.金属の電気伝導について電気抵抗の原因を理解し、簡単なモデルでオームの法則やジュール熱等を説明できる。
2.金属の電気伝導モデルから電気抵抗の温度変化について説明できる。さらに発展的に熱伝導との関連を説明できる。
3.超伝導における臨界温度と臨界磁界の関係、第2種超伝導の特性を説明できる。さらに超伝導の応用技術について説明できる。
4.物質の誘電的性質について、原子レベルでの分極の成立ちからマクロな誘電率との関係を説明できる。また、強誘電体の基本的性質からその応用について説明できる。
5.交流電界中において分極発生に遅れがあるとき、複素誘電率で表現できることを説明できる。複素誘電率と誘電正接との関係を理解し、等価回路による表現ならび誘電体損について説明できる。
6.物質の磁性について、磁性の分類から特に強磁性体の性質、その応用について説明できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1標準的な到達レベルに加えて、以下のことができる。 □緩和時間近似モデルにより電気伝導が説明できる。□ 1粒子の衝突平均化モデルより電気抵抗の原因を説明でき、電気伝導度の式の導出ができる。 □ 1粒子の衝突平均化モデルによるジュール熱の導出が出来る。 □ Cu, Al等の純金属について原子密度から自由電子密度を求め、これと抵抗率から緩和時間、移動度を算出することができる。□1粒子の衝突平均化モデルより電気伝導度の式の導出ができない。 □Cu, Al等の純金属について原子密度から自由電子密度を求め、これと抵抗率から緩和時間、移動度を算出することができない。
評価項目2 標準的な到達レベルに加えて、以下のことができる。 □抵抗温度係数、導線材料の規格、抵抗用合金の種類を学習し、実用上の問題に応用できる。 □電子比熱の式を与えられたら、一般的な熱伝導度の式と電気伝導度からWiedemann-Franzの法則を導くことができる。□ Matthiessenの法則の意味と、なぜそうなるのか、また温度と低効率の関係を説明できる。 □ 抵抗温度係数を説明できる。 □ 一般的なモデルによる比熱と熱伝導度の関係を説明できる。 □ 電子比熱の意味を理解し、格子振動と電子による熱伝導があり、電子による伝導が支配的である理由と、Wiedemann-Franzの法則を説明できる。□Matthiessenの法則ならびにその他理たちについて説明ができない。 □抵抗温度係数の意味を説明できない。
評価項目3標準的な到達レベルに加えて、以下のことができる。 □ 磁束の流動とピン止めを説明できる。 □ Bose凝縮から超伝導ギャップの形成、トンネル効果、ジョセフソン効果の概要について説明できる。 □ 超伝導マグネット、磁気浮上、SQUID等の概要を説明できる。□ 抵抗消失、完全反磁性(マイスナー効果)の意味を説明でき、温度、磁界と超伝導領域、臨界温度、臨界磁界について説明できる。 □ 第1種、第2種超伝導の違い、渦糸構造、磁束の量子化、コヒーレンス長、超伝導体内への磁界の侵入長について説明できる。 □ 侵入長とコヒーレンス長の比と第1種、第2種超伝導の関係を理解し、コヒーレンス長から上部臨界磁界を計算できる。 □ クーパーペアの形成とBose凝縮の概要を説明できる。 □ 超伝導の応用例を挙げることができる。□ 完全反磁性(マイスナー効果)の意味を説明できない。温度、磁界と超伝導領域、臨界温度、臨界磁界を図示することができない。
評価項目4標準的な到達レベルに加えて、以下のことができる。 □非線形性、異方性についても理解する。 □ ローレンツの内部電界の式を導出できる。 □ 配向分極について統計熱力学モデルからランジュバン関数を導出できる。 □ 誘電体のdomain構造からED特性を説明できる。 □ キュリー温度とキュリーワイスの法則を説明できる。□ 電気双極子モーメントと分極Pの関係を悦明できる。 □ ローレンツの内部電界(局所電界)を説明でき、Clausius-Mossottiの式を導出できる。 □ 電磁気学的モデルにより電子分極率を導出できる。イオン分極、界面分極を定性的に説明できる。 □ 配向分極のモデルを理解し、温度依存性をもつ理由を説明できる。 □ 強誘電体のED特性、自発分極の発生について説明できる。 □ 代表的な強誘電体の性質と応用例、圧電性との関係について説明できる。□ 誘電体におけるD, E, P の関係、ならびに電気双極子モーメントと分極Pの関係を悦明できない。 □ 電子分極、イオン分極、配向分極の成り立ちを説明できない。 □ 強誘電体のE-D(もしくはE-P)特性を説明できない。
評価項目5標準的な到達レベルに加えて、以下のことができる。 □ 電子分極、イオン分極、配向分極に加えて、界面分極について説明ができる。 □ 分極の周波数依存性(分散)の共鳴型と緩和型の違いを説明できる。□ 分極の発生に遅れがある場合、複素比誘電率で表わされることを説明できる。 □ 電子分極、イオン分極、配向分極それぞれの周波数依存性と、誘電分散を説明できる。 □ 誘電体損を理解し、誘電正接が与えられた誘電体のコンデンサの等価回路を求めることができる。□分極の発生に遅れがある場合、複素誘電率を用いる理由を説明できない。 □ 複素誘電率と誘電正接の関係を説明できない。また誘電正接を与えられた誘電体のコンデンサの等価回路を求めることができない。
評価項目6標準的な到達レベルに加えて、以下のことができる。 □ フントの規則による原子の磁気モーメントの決定を説明できる。 □ 強磁性体のキュリーワイスの法則を説明できる。 □ 磁気記録の原理について説明できる。□ 反磁性、常磁性、強磁性、反強磁性、フェリ磁性の特徴と代表的な物質を説明できる。 □ ボーア磁子、電子スピン、核磁子、古典モデルによる反磁性、ランジュバンの常磁性等から磁性の成り立ちの概要を説明できる。 □ 磁区と磁壁について理解し、磁壁の移動から磁化曲線、残留磁束密度、保持力を説明できる。 □ 軟磁性、硬磁性材料とその応用例を挙げることができる。□ 反磁性、常磁性、強磁性、反強磁性、フェリ磁性の特徴と代表的な物質を上げることができない。 □ 磁区と磁壁を説明できない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
本講義においては、既に講義のあった半導体以外の、導電性材料、超伝導体、誘電体、磁性体について、それぞれについての基礎理論を学習し、実際の材料の性質へ理論がどのように適用できるかを理解する。特に基礎理論では、物質の電気的性質(導電性、誘電性、磁性など)が、物質の構造と結びついた電子の働きから成り立っていることを学習し、結晶構造や、電磁気学的モデル、簡単な量子論によって物質の電気的特性を理論的に説明できるようにする。さらに、理論から現実の材料の物性値を予測できるようにする。
授業の進め方・方法:
講義Ⅱであることから1回の講義に対して4時間分の自学自習は不可欠である。また講義中には例題、応用問題を行い、小テストによって理解度をチェックするので、関数電卓は授業には必ず持参する事。
注意点:
本科目では前期科目の「物性概論」の内容を使う場面が良くあるので、受講していることが望ましい。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
後期
3rdQ
1週 金属における電気伝導
□ 1粒子の衝突平均化モデルより電気伝導度の式の導出ができる。また、緩和時間近似モデルにより電気伝導が説明できる。
□ 1粒子の衝突平均化モデルによるジュール熱の導出が出来る
2週 金属における電気伝導 □ Cu, Al等の純金属について原子密度から自由電子密度を求め、これと抵抗率から緩和時間、移動度を算出することができる。
3週 金属の固有抵抗と各種抵抗材料 □ 金属の電気抵抗の原因は格子振動と不純物による散乱であることを理解し、温度と抵抗率の関係、Matthiessenの法則が成り立つことを説明できる。
□ 抵抗温度係数、導線材料の規格、抵抗用合金の種類を学習し、実用上の問題に応用できる。
4週 金属の熱伝導 □ 一般的なモデルによる比熱と熱伝導度の関係を説明できる。
□ 電子比熱の意味を理解し、格子振動と電子による熱伝導があり、電子による伝導が支配的である理由と、Wiedemann-Franzの法則を説明できる
5週 超伝導現象の概要 □ 抵抗消失、完全反磁性(マイスナー効果)の意味を説明でき、温度、磁界と超伝導領域、臨界温度、臨界磁界について説明できる。
6週 第2種超伝導 □ 第1種、第2種超伝導の違い、渦糸構造、磁束の量子化、コヒーレンス長、超伝導体内への磁界の侵入長について説明できる。
□ 侵入長とコヒーレンス長の比と第1種、第2種超伝導の関係を理解し、コヒーレンス長から上部臨界磁界を計算できる。
□ 磁束の流動とピン止めを説明できる。
7週 BSC理論の概要と超伝導応用技術
□ クーパーペアの形成とBose凝縮の概要、さらに超伝導ギャップの形成、トンネル効果、ジョセフソン効果の概要について説明できる。
□ 超伝導マグネット、磁気浮上、SQUID等の概要を説明できる。
8週 静電界における分極と誘電率 □ 電気双極子モーメントと分極Pの関係を悦明でき、非線形性、異方性についても理解する。
□ ローレンツの内部電界(局所電界)を説明できる。Clausius-Mossottiの式を導出できる。
4thQ
9週 分極の種類 □ 電磁気学的モデルにより電子分極率を導出できる。
 さらに イオン分極、界面分極を定性的に説明できる。
□ 配向分極について統計熱力学モデルからランジュバン関数を導出できる。
10週 強誘電体 □ 強誘電体のED特性、自発分極の発生について理解し、誘電体のdomain構造からそれらを説明できる。
□ キュリー温度とキュリーワイスの法則を説明できる。
□ 代表的な強誘電体の性質と応用例、圧電性との関係について説明できる。
11週 交流電界における 誘電体
□ 分極の発生に遅れがある場合、複素比誘電率で表わされることを説明できる。
□ 電子分極、イオン分極、配向分極それぞれの周波数依存性と、誘電分散を説明できる。
12週 交流電界における 誘電体 □ 誘電体損を理解し、誘電正接が与えられた誘電体のコンデンサの等価回路を求めることができる。
13週 磁性の種類とその原因 □ 反磁性、常磁性、強磁性、反強磁性、フェリ磁性の特徴と代表的な物質を説明できる。
□ ボーア磁子、電子スピン、核磁子、古典モデルによる反磁性、ランジュバンの常磁性を理解し、フントの規則による原子の磁気モーメントの決定を説明できる。
14週 強磁性体の性質 □ 磁区と磁壁について理解し、磁壁の移動から磁化曲線、残留磁束密度、保持力を説明できる。
□ 強磁性体のキュリーワイスの法則を説明できる。
□ 軟磁性、硬磁性材料とその応用、磁気記録の原理について説明できる。
15週 試験答案の返却・解説 試験において間違った部分を自分の課題として把握する(非評価項目)。
16週

評価割合

試験演習・小テスト相互評価レポートポートフォリオ合計
総合評価割合70200100100
基礎的能力000000
専門的能力70200100100
分野横断的能力000000