電磁気学Ⅱ

科目基礎情報

学校 鹿児島工業高等専門学校 開講年度 令和05年度 (2023年度)
授業科目 電磁気学Ⅱ
科目番号 0052 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 履修単位: 1
開設学科 電気電子工学科 対象学年 3
開設期 後期 週時間数 2
教科書/教材 大貫繁雄、安立三郎「演習 電気磁気学」(森北出版)
担当教員 佐藤 正知

到達目標

1.複数の導体が空間にある場合(導体系)、それぞれの導体の電荷と電位の関係が電位係数、容量・誘導係数で表されることを説明できる。そしてそれを応用できる。
2.代表的な導体系における静電容量を求めることができる。
3.静電エネルギーの考え方を説明でき、仮想変位およびエネルギーと力の関係から導体に働く力を計算できる。
4.誘電体における分極現象、誘電率、電束密度の定義と考え方を身に着け、誘電体入キャパシタの静電容量を計算できる。
5.誘電体境界面における電界と電束密度の性質を理解し、複数種類の誘電体がある場合の電界と電位差、静電容量を計算できる。
6.誘電体中の静電エネルギーの考え方と仮想変位から境界面に働く力を求め、Maxwell応力への一般化ができる。
7.電流の定義から金属においてオームの法則が成立つこと、平均速度、移動度と導電率の関係等を説明できる。
8.定常電流界(静電アナロジー)を応用して各種電極形状の場合の抵抗の計算ができる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1 標準的な到達レベルに加えて、以下のことができる。 1)電位の重ねの理から電位係数の考え方を導くことができる。 2)重ねの理を応用することができる。 3)電位係数を同心球導体の接地、点電荷と導体球の関係などへ応用できる。1)同心球導体に任意の電荷を与えた場合の電界をガウスの法則より求めることができる。  2)同心球導体の外球、内球それぞれの電位を電界から求める事ができ、電荷と電位の関係を行列で表現できる。 3)電位係数と容量係数・誘導係数の関係を説明できる。 4)接地、静電遮蔽(シールド)について説明できる。電気力線の意味と性質、導体の性質を十分に理解して、様々な導体系において電気力線の予想図を書くことができない。また、電界におけるガウスの法則の意味を十分に理解していない。即ち、同心球の場合、電荷が様々に与えられたとき等、応用が出来ない。
評価項目2標準的な到達レベルに加えて、以下のことができる。  複雑なキャパシタの接続の場合の合成容量を計算できる。1)静電容量の定義(導体間、孤立導体)を説明できる。 2)同心球導体、同軸円筒導体、平行導線間、平行平板などの導体間の電界をガウスの法則より求め、電位差を求め、静電容量を導くことができる。また、数値が与えられたとき、それぞれの値を求める事ができる。 3)キャパシタの並列、直列接続の式を導くことができる。同心球導体の内外導体に任意の電荷が与えられた時の、外導体、内外導体間の静電容量を求めることができない。
評価項目3標準的な到達レベルに加えて、以下のことができる。  キャパシタの電圧一定(電源が接続されている)とき、系全体のエネルギー変化からf=-ΔW/Δx、キャパシタのエネルギーWcのみに着目したときf=ΔWc/Δx、となることを導くことができる。1)平行平板キャパシタを充電するのに必要なエネルギーの式を導出でき、これより空間に蓄えられる静電エネルギーを説明できる。 2)仮想変位の考え方で、平行平板キャパシタの電極に働く力の式を導く事ができる。 3)仮想変位やエネルギーと力の関係から各種キャパシタ(同心球、同軸円筒、平行導線)の導体に働く力を求める事ができる。電気エネルギー(電源のする仕事)の概念を十分に理解していない。また、仮想変位の考え方、それを一般化した力とエネルギーの関係 f =-∂W/∂xを使いこなすことができない。
評価項目4標準的な到達レベルに加えて、以下のことができる。  誘電体中にある平行導線間の静電容量を求めることができる。1)分極現象、電気双極子モーメントと分極密度、分極電荷の関係を理解し、平行平板導体間に誘電体があるモデルからD=ε0E+Pを導く事ができる。 2)χ, εr, εの名称とこれらの関係からD=εEを導くことができる。 3)電束密度のガウスの法則を応用して誘電体の入ったキャパシタの静電容量を求める事ができる。平行平板導体間に誘電体があるモデルからD=ε0E+Pを導く事ができない。また、誘電体が存在する場合は原則として電束密度のガウスの法則を用いなければならないことを理解できない。
評価項目5標準的な到達レベルに加えて、以下のことができる。  誘電体境界面にある導体球等の応用問題を解くことができる。 1)電束密度の法線成分が連続、電界の接線成分が連続であることを理解し、応用できる。 2)2種の誘電体が重なって/隣り合わせに入ったキャパシタ内の電束密度、電界、静電容量を導出できる。境界面における電界と電束密度の性質の応用として、電気力線の屈折の法則を導くことができない。
評価項目6標準的な到達レベルに加えて、以下のことができる。  平行平板中で電界に平行な境界面を持つ2種の誘電体の境界面に働く力を、電源のエネルギー変化を考慮して導くことができる。1)仮想変位による誘電体界面に働く力を導出できる。 2)電源のエネルギー変化を考慮した場合の界面に働く力を説明できる。 3)Maxwell応力を理解し、界面に働く力を計算できる。誘電体境界面の仮想変位のモデルの図から界面に働く力を導くことができない。
評価項目7標準的な到達レベルに加えて、以下のことができる。 1)自由電子の運動を平均化した電気伝導モデルによりジュール熱を説明できる。 2)抵抗温度係数の定義を理解し、抵抗値を計算できる。1)電流の定義I = dQ/dtと I = envSの関係、移動度を説明できる。 2)自由電子の運動を平均化したモデルによりオームの法則の説明ができる。 3)温度による導体の抵抗変化を説明できる。自由電子の格子原子への衝突、加速のモデルから平均速度の考え方、オームの法則を導くことが出来ない。
評価項目8標準的な到達レベルに加えて、以下のことができる。  電界方向に微小な部分の抵抗dRから積分により抵抗を求め、 静電アナロジーの結果と一致することを導くことができる。1)定常電流場での界面における電流密度の連続性を理解し、静電界とのアナロジーを説明できる。 2)静電アナロジーを応用し、同心球、同軸円筒型抵抗体の抵抗を計算できる。静電アナロジーを応用して、抵抗体の入った導体間の抵抗を計算できない。

学科の到達目標項目との関係

本科(準学士課程)の学習・教育到達目標 3-a 説明 閉じる
本科(準学士課程)の学習・教育到達目標 3-c 説明 閉じる

教育方法等

概要:
 前期の電磁気学Ⅰに続き、静電界の後半にあたる導体系の電荷と電位差から静電容量の導出、誘電体の取り扱い、さらに定常電流までを学習する。ベクトル解析等の高度な数学表現は用いず、力線の概念とそのベクトルによる表現、そして球体、円筒など簡単なモデルから電磁気学理論における基本的考え方を身に着け、最終的には、実用に関係する各種モデルにおける電界、電位、静電容量、エネルギー、力 等を導き出だせるようになることを目標とする。
授業の進め方・方法:
 単に数式を記憶するのではなく、モデルから数式を導き出す力を養うことが目標である。最終的には各種演習問題を自力で解答できるようにする。授業中にその内容を理解するために、必ず予習を行うこと。授業中の演習問題をその場で考えて解くことが大事である。なお各評価項目に関する小テストを行う。
注意点:
 力線の性質を理解し、電界についてのイメージを持つことがまず大切であり、そのためには図をきちんと書くこと。各種計算では数式を記憶するのではなく図との関係を理解する事。ある程度の定積分の計算力が求められる。理解が不十分な問題は復習として必ず自分で解くことを怠らぬこと。中間試験を実施する(7週目後の予定)

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
後期
3rdQ
1週 電位係数、容量・誘導係数、重ねの理 □ 帯電導体の性質から電気力線を描くことができる。またガウスの法則を用いて電界の計算ができる。
2週 電位係数、容量・誘導係数、重ねの理 □ 同心球導体など、導体系の電荷と電位の関係を行列で表現できる。
□ 電位係数と容量係数・誘導係数の関係を説明できる。
3週 電位係数、容量・誘導係数、重ねの理 □ 同心球導体の接地、点電荷と導体球の関係などへ応用できる。
□ 電位の重ねの理を説明できる。
□ 誘導電荷と静電遮へいを説明できる。
4週 静電容量 □ 静電容量の定義を説明できる。
□ 平行平板、同心球、同軸円筒導体など静電容量を計算できる。
5週 静電容量 □ 平行導線のなど静電容量を計算できる。
□キャパシタの並列、直列接続の式を導出できる。
6週 静電エネルギー □ 平行平板キャパシタを充電するのに必要なエネルギーの式を導出でき、空間に蓄えられる静電エネルギーのを説明できる。
□ 系のエネルギーと力の関係を説明できる。
7週 静電エネルギー □ 仮想変位やエネルギーと力の関係を用いて各種キャパシタの電極に働く力を導出できる。
8週 分極現象、誘電率、電束密度、誘電体と静電容量 □ 分極現象、電気双極子モーメントと分極の関係、電界、電束密度、分極の関係を説明できる。
□ 電気感受率、比誘電率の関係を説明できる。
4thQ
9週 分極現象、誘電率、電束密度、誘電体と静電容量 □ 電束密度のガウスの法則を説明できる。
□ 誘電体が入った場合の静電容量を計算できる。
10週 誘電体界面の現象 □ 電束密度の法線成分が連続、電界の接線成分が連続であることを理解し、応用できる。
□ 2種の誘電体が重なって/隣り合わせに入ったキャパシタ内の電束密度、電界、静電容量を導出できる。
11週 誘電体中の静電エネル
ギー
□ 仮想変位による誘電体界面に働く力を導出できる。
□ 電圧一定の場合(電源のエネルギー変化を考慮した)界面に働く力を導出できる。
12週 誘電体中の静電エネル
ギー
□ Maxwell応力を理解し、それを用いた界面に働く力を計算できる。
13週 電流とオームの法則 □ 電流の定義I = dQ/dtと電子の移動からの電流I = envSの考え方、移動度との関係を説明できる。
□ 1粒子に平均化したモデルによるオームの法則、電流密度・導電率・電界の関係を説明できる。
14週 電流とオームの法則 □ 1粒子平均化モデルによるジュール熱を説明できる。
□ 抵抗温度係数の定義を理解し、抵抗値を計算できる。
15週 試験答案の返却・解説 試験において間違った部分を自分の課題として把握する(非評価項目)。
16週

評価割合

試験小テスト・レポートその他合計
総合評価割合70300000100
基礎的能力0000000
専門的能力70300000100
分野横断的能力0000000