応用電子物性

科目基礎情報

学校 鹿児島工業高等専門学校 開講年度 令和05年度 (2023年度)
授業科目 応用電子物性
科目番号 0008 科目区分 専門 / 選択
授業形態 講義 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 電気情報システム工学専攻 対象学年 専1
開設期 後期 週時間数 2
教科書/教材 電子デバイス物性  宇佐美 晶著  オーム社 (日本理工出版会の旧刊と同一)
担当教員 西村 道明

到達目標

1.光の粒子性,電子の波動性を示す考え方,理論式導出,実験データ対比を論理だてて説明できる.
2.電子の波動方程式に基づき,原子や結晶における電子の状態及び基本的な特性の説明ができる.
3.固体(結晶)のバンド構造,キャリア濃度による電気伝導性,真正(不純物)半導体の特徴が説明できる.
4.p型及びn型半導体による各種半導体デバイス,これらの構造,機能,用途,及び課題について説明できる.

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1光の粒子性及び電子の波動性を示す上で,背景となる考え方,理論式導出と実験データとの対比を論理だてて説明できる.光の粒子性と電子の波動性を導く考え方の説明,及び理論式と実験データの対比による論理的な説明ができる.光の粒子性,電子の波動性を,それぞれの根拠を明示して論理だてて説明することができない.
評価項目2電子の波動方程式の解法及び波動解の性質について説明し,原子や結晶における電子のエネルギー状態及び基本的な特性の説明ができる.原子や結晶における電子の波動解の性質や,電子のエネルギー状態の基本的特性の説明ができる.原子や結晶における電子の置かれている状態の違い,これによる電子のエネルギー状態の差異等について説明ができない.
評価項目3キャリア濃度の導出と固体(結晶)バンド構造との比較,関連して現れる物質の電気伝導性への影響や真性(不純物)半導体の特徴説明ができる.固体(結晶)のバンド構造とキャリア濃度からみた物質の電気伝導性,真性(不純物)半導体の特徴等が説明できる.固体(結晶)のバンド構造及びキャリア濃度と物質の電気伝導性の関連性,真性(不純物)半導体の特徴,等の説明ができない.
評価項目4p型及びn型半導体により構成される各種半導体デバイスの構造,特性発生メカニズムに基づいて夫々の機能,用途,及び課題について説明できる.p型及びn型半導体によるダイオード及びバイポーラトランジスタの構造,電圧-電流特性発生メカニズム,用途等について説明できる.p型及びn型半導体によるダイオード及びバイポーラトランジスタの構造,空乏層の生成、電圧-電流特性,等について説明できない.

学科の到達目標項目との関係

学習・教育到達目標 3-1 説明 閉じる
JABEE(2012)基準 1(2)(d)(1) 説明 閉じる
JABEE(2012)基準 2.1(1)③ 説明 閉じる
教育プログラムの科目分類 (3)③ 説明 閉じる

教育方法等

概要:
この科目では,光・電子の粒子性・波動性及び量子力学の基本的な理解から,半導体デバイスの基本動作メカニズムの理解,各種半導体の機能や課題の把握を通して,半導体デバイスの適切な応用や課題解決の素地を習得する.量子力学等の基本に基づいて物質のエネルギーバンド構造の基本を理解し,光の粒子性及びバンド構造がもたらす種々の半導体デバイスの基本的特性の本質が理解できるようにする.これらの理解に基づき,各種半導体の動作メカニズムを把握するとともに,これらの動作特性がもたらす効果と課題を正しく理解する.これらの効果及び課題の側面理解により,システムの用途に合わせてデバイス選択:開発できる実践力に繋げる.
授業の進め方・方法:
光の粒子性,電子の波動性,初等的な量子力学による物質(結晶)中のエネルギーバンドを理解する上で,これらを明確に示す数式の導出をを必要とする.自分でこれらの式の導出を行い実験データと比較して現象の物理的理解を深めることが目的である.これら深めた理解に基づき最終的には半導体デバイスの基本的特性を説明できるようにする.講義は順番に各自が担当箇所の説明を行う輪講形式とする.事前に作成したレポート(報告書)とパワーポイント資料で担当箇所の説明をする.講義参加者による質疑応答で互いの理解を深める.
注意点:
本科で修得した量子力学・電子物性・半導体物性の理解を更に深め,半導体デバイスの成立ち,特性,機能の本質を捉えた理解により各種デバイスの応用や課題解決につながる能力を獲得する.情報処理に限らないエレクトロニクス機器の開発に関われる下地をつくる.このため、互いの理解を深める質疑応答は積極的に行うこと.講義及び質疑の内容は必ず各自十分に復習を行なっておくこと.
毎回,予習や演習問題等の課題を含む復習として,210分以上の自学自習が必要である〔授業(90分)+自学自習(210分)〕×15回

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
後期
3rdQ
1週 電子物性の基礎(原子と連続体(結晶)) 元素(原子)の特徴分類(周期表)と物質(結晶)の構造,結合力,導電性の分類及びその概要が説明できる
2週 電子物性の基礎(光の粒子性) 光の粒子性を説明する理論式(プランク分布)と根拠データ等を説明できる
3週 電子物性の基礎(物質の波動性と粒子性) 特殊相対性理論から物質の粒子性・波動性の両側面,及びド・ブロイ仮説のもつ物理的意味(電子の波動性)を説明できる
4週 電子物性の基礎(原子スペクトル) 原子スペクトルの課題,離散的性質,ボーアモデルによる解釈,量子化の意味等について説明できる
5週 量子力学の基礎(波の方程式と波動関数) マクロな波の方程式と対比させてシュレーディンガーの波動方程式,確率密度解釈の説明ができる
6週 量子力学の基礎(波動解と量子数) 水素原子の波動方程式の性質,波動解の量子数とエネルギー状態について説明できる
7週 量子力学の基礎(電子スピンと排他律) 電子スピンとパウリの排他律の関連が説明できる
8週 量子力学の基礎(自由電子の状態密度) 自由電子モデルで電子のエネルギー状態密度の導出,占有確率(フェルミディラック分布)が説明できる
4thQ
9週 固体内電子(元素と結晶) 元素(原子)における電子雲の違いと電気陰性度,結晶形成力の違いを調査し説明できる
10週 固体内電子(電気伝導) 固体内の電気伝導における電子の移動度(抵抗)の式の導出,発生メカニズムについて説明できる
11週 固体内電子(エネルギーバンド) 結晶内での電子のエネルギーバンド構造発生のメカニズム,エネルギーギャップと導電性について説明できる
12週 半導体物性(不純物半導体) 不純物準位,キャリア濃度,電気伝導度,温度依存性が夫々の関連性で説明できる
13週 半導体物性(pn接合半導体) ダイオード,バイポーラの基本的半導体デバイスの空乏層の発生,バンド構造,電圧-電流特性,機能の説明ができる
14週 半導体物性(各種半導体デバイス) 電界効果トランジスタ,パワー系半導体デバイス,太陽電池セルデバイス,LEDデバイス等の調査,機能発生のメカニズム説明
15週 定期試験 試験では理解度のレベルを主として問う
16週 試験答案の返却・解説 試験において間違えた部分を自分の課題として把握する

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合70300000100
基礎的能力70300000100
専門的能力0000000
分野横断的能力0000000