地球科学特論

科目基礎情報

学校 沖縄工業高等専門学校 開講年度 令和02年度 (2020年度)
授業科目 地球科学特論
科目番号 6028 科目区分 一般 / 選択
授業形態 授業 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 機械システム工学コース 対象学年 専1
開設期 後期 週時間数 2
教科書/教材 教員が作成または用意した講義・実習教材、プレゼンテーション資料、および受講生が収集した論文・報告書・資料等、またそれらの検索・携行や演習のため、ノートPCを持参することが望ましい。
担当教員 木村 和雄

到達目標

①地圏環境を構成する諸要素を、各種主題図、衛星・航空写真、各種観測データ、既往の資料の読解などから、理解できるようにする。②沖縄島の身近な地圏環境を素材に、その時系列変化とより広域的な環境変動との関係や、人類・社会の環境利用形態を、構造的に説明できるようにする。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安最低限の到達レベルの目安
評価項目1 地圏環境の諸要素を、現地観察、主題図、衛星・航空写真、観測データなどから読み取ることができる(A-1)。 沖縄島の地形・地質環境と地球規模の営力変動とを関連づけて、環境変遷史を復元出来る。 低地・段丘・地すべり斜面・一般斜面・人工地形の配置と構造を空間的に認識し、それらの形成順序を推定できる。 沖縄島に分布する地形種のうち、低地・段丘・斜面・人工地形を形態的に識別できる。
評価項目2 地圏環境の変化を、地表を構成する物質の解釈によって、簡潔に説明できる程度の知識がある(A-1)。 沖縄島の自然史とそれに対する人為的な環境改変との関係を把握し、土地利用の功罪を評価できる。 沖積層・琉球層群・島尻層群・国頭層群・人工地盤の観察(または資料読解)から、それらの成因や形成環境を推定できる。 沖縄島を構成する地質のうち、沖積層・琉球層群・国頭層群・人工地盤を識別できる。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
 この授業では、地質学、地形学の手法や成果をベースに、自然環境の形成と変化、および、それらと人類との関わりを学ぶ。特に沖縄島の地圏環境を対象に、その地球上における普遍性と特異性に迫る。
授業の進め方・方法:
 授業計画に示したいくつかのテーマについて講義と基礎的実習を反復し、その成果をレポートとしてまとめることにより、「地球科学概論」より実践的に地圏環境を理解できるようにする・・・つもりだったが、受講生多数の場合は、実施教室における空間確保や使用機器の衛生管理が難しいため、遠隔授業と基本とする。受講生として、本科「地理学概論」の自然地理学分野(前期の内容)や、「地球科学概論」の内容を確実に理解し、そうした領域の知識や、環境認識・環境利用・自然災害対応などのための情報収集能力、身近な地学事象の観察・解釈・活用のノウハウを強化したい学生を想定している。
注意点:
 この科目は、受講人数によって授業内容が大幅に変わる。受講生が7名程度以下であれば、この授業本来の狙いを実現し易い。即ち、講義・現地や実物の観察・解釈・報告を反復し、観察力・分析的思考力・説明力を養う実践的授業を展開できる・・・のだが、今年度の時間割では現地観察は困難、かつ授業日以外の日程もタイトなので、野外観察は割愛せざるを得ない見込みである。
 受講生が7名を大きく超える場合は、実施条件の制約から、本科と同様の間接的な情報を用いた知識偏重型の授業とせざるを得ない。特に受講資格のある学生の約8割以上が集中すると、本科以上の大人数授業になる。そうした状況は避けたいため、本科「地理学概論」「地球科学概論」への関心や理解が不十分もしくは内容を忘却した学生や、「冷やかし」「当て馬」「保険」としての受講申請が、皆無であることを切望する。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
後期
3rdQ
1週 沖縄という島:琉球弧および沖縄島を地球科学的に俯瞰する。 本科で学んだ沖縄島の地圏環境をリマインドし、授業概要を把握する。
2週 島弧の構造と琉球弧の誕生:ユーラシア東縁における新生代の地殻変動像を概観する。 各種堆積岩の形成環境とその分布および島弧海溝系の地形配列との関係から、琉球弧周辺の地殻変動像と広域的な古地理の変遷を推定できる。
3週 地質学からみたサンゴ礁:自然史の指標としての礁成サンゴ石灰岩を概観する。 礁成サンゴ石灰岩を観察し、砕屑性堆積岩類や変成岩類との違いを把握すると共に、それらの形成環境を理解する。
4週 離水するサンゴ礁1:空中写真判読法を学び沖縄島の地形配置を概観する。 空中写真実体視の技法を身につける。
5週 離水するサンゴ礁2:空中写真を判読し沖縄島の地形配置からわかる第四紀地史を把握する。 沖縄島内の1:25000地形図半図福程度の模式的地域において、地形分類図(段丘区分図)を作成し、それに基づいて当該地域の第四紀地史をレポートする。
6週 海成段丘の形成要因1:地球規模の氷河性海面変動とその要因を学ぶ。 地球気候変動およびその主因となるミランコビッチフォーシングを理解する。
7週 海成段丘の形成要因2:汎地球的海水準変動と局地的な地殻変動が合成された地形・地質プロセスを確かめる。 沖縄島は氷河成海面変動と局地的地殻変動が合わさることで発達してきたことを理解する。またそのような地形・地質プロセスの内陸への影響≒河成段丘の発達も把握する。
8週 沖縄島の成長と変貌:海底地形図等を用いて沖縄島周辺の古地理を分析する。 地球気候変動がもたらした沖縄島付近の局地的な古地理の変遷を、地図作業を通じて復元し、レポートを作成する。
4thQ
9週 マージとジャーガルと気候変動:気候変動と岩石の風化・土壌形成の関係を知る 。 沖縄島に分布する土壌や土壌に挟在する風成塵について資料読解を通じて、気候条件の累積や気候変動を推定できる。
10週 城と地形、村と地質:グスクや伝統的な集落の立地と地形・地質の関係を知る。 これまで学んだことをもとに、地圏環境と伝統的土地利用との関係を、セミナー形式で説明できる。
11週 段丘崖ではない長い崖:空中写真を用いて沖縄島の巨大地すべり地形群について知る。 地形図・空中写真判読 やGoogle Earth、J-SHISデータベースの活用 and/or 現地観察により、一般斜面と地すべり斜面の形態的違いを認識できる。
12週 巨大地すべりが示唆するもの:沖縄における大地震の痕跡を探る 世界各地の巨大地すべりの多くが地震成であることを確かめ、それに類する地形が沖縄島にも多数分布していることを知る。
13週 浜や三角州における異常堆積物:沖縄における大地震の痕跡を探る2 三角州堆積物や礁成サンゴ石灰岩などの正常堆積物とは異なる、津波石やそれに準ずる異常堆積物存在を知る。そしてそれらは琉球弧にも分布していることを、文献または現地観察で確かめる。
14週 封印されるサンゴ礁:埋立地の拡大とそれに連動する地形改変を把握する。 埋立地について、現行地形図の読解と旧版地形図・空中写真判読とを比較対照し、土地利用や防災上の功罪を評価できる。
15週 学期末課題の作成とそれに関する質疑 学習成果を総論または各論としてレポート形式でまとめる。
16週

評価割合

各論の演習参加態度出席状況期末レポート合計
総合評価割合60101020100
基礎的能力6000565
応用力0001515
主体的・継続的学修意欲01010020