物理特講

科目基礎情報

学校 旭川工業高等専門学校 開講年度 令和06年度 (2024年度)
授業科目 物理特講
科目番号 0020 科目区分 一般 / 選択
授業形態 講義 単位の種別と単位数 学修単位: 1
開設学科 人文理数総合科(理数系) 対象学年 5
開設期 前期 週時間数 前期:2
教科書/教材 講義プリント、(参考書)原康夫「量子力学」(岩波書店 岩波基礎物理シリーズ5)
担当教員 松原 英一

到達目標

1. 光の粒子性、電子の波動性を通じて、古典物理では説明できない現象があることを理解し、量子力学の必要性を説明できる。
2. 電子をはじめとした量子の状態が波動関数で記述されることを理解し、様々な条件下における電子の固有状態を説明できる。
3. 行列表現や、ブラ・ケットといった量子力学の理論体系における表現方法を理解し、いくつかの簡単な例に適用できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1光の粒子性、電子の波動性を通じて、古典物理では説明できない現象があることをよく理解し、量子力学の必要性をよく説明できる。光の粒子性、電子の波動性を通じて、古典物理では説明できない現象があることを理解し、量子力学の必要性を簡単に説明できる。量子力学の必要性について、理解できない。
評価項目2電子をはじめとした量子の状態が波動関数で記述されることをよく理解し、様々な条件下における電子の固有状態をよく説明できる。電子をはじめとした量子の状態が波動関数で記述されることを理解し、様々な条件下における電子の固有状態を簡単に説明できる。電子の状態を波動関数を用いて記述できない。
評価項目3行列表現や、ブラ・ケットといった量子力学の理論体系における表現方法をよく理解し、様々な例に適用できる。行列表現や、ブラ・ケットといった量子力学の理論体系における表現方法を理解し、簡単な例に適用できる。行列表現やブラ・ケットなどの表現方法を理解できない。

学科の到達目標項目との関係

学習・教育到達度目標 本科の教育目標 ③ 説明 閉じる

教育方法等

概要:
量子力学は、電子・光子・陽子など、波動性と粒子性の両方の性質を示すミクロの物質の挙動を説明する物理学の一分野であり、最先端科学の根幹をなしているほか、半導体素子・レーザー・電子顕微鏡、量子コンピュータなどの様々な科学技術をもたらす原動力となっている。
本講義では、量子力学の初歩をなるべく平易な説明で展開することで、受講生がその基本的な考え方を理解し、量子力学が関与する現象に対して興味や関心が高められることを目的とする。
授業の進め方・方法:
独自の講義資料(プリント)に沿って授業を進める。演習問題を用意するので、授業内または自宅学修で取り組んでもらう。演習問題の提出や解説、質問対応などには、対面の他、ICTも利用する。
注意点:
・教育プログラムの学習・教育到達目標はA-1とする。
・総時間数45時間(自学自習15時間)
・自学自習時間(15時間)は,日常の授業(30時間)に対する予習復習,課題の解答作成時間,試験のための学習時間を総合したものとする。
・評価については,合計点数が60点以上で単位修得となる。その場合,各到達目標項目の到達レベルが標準以上であること,教育プログラムの学習・教育到達目標の各項目を満たしたことが認められる。
・これまでに履修してきた物理と比べて、本講義の学修内容は高度で難しいものとなっているため,わからない点は学生間や教員とのやりとりで早めに解決することを期待する。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ・ガイダンス
・量子力学の必要性
・光の粒子性
・今まで学んできた物理(古典論)では説明できない現象があることを説明できる。
・光電効果やコンプトン効果について理解し、光の粒子性について説明できる。
2週 ・電子の2重性
・不確定性原理
・電子線の回折を通じて、電子が粒子性のみならず波動性をももつ(2重性)ことが説明できる。
・電子等の微小な粒子の場合、位置の測定値の不確定さと、速度の測定値の不確定さの積が一定の値より大きいことを理解し、その意味を説明できる。
3週 ・波動方程式
・電子の2重性と波動方程式
・弦のような物体を振動が伝わる様子を既述する波動方程式を用い、定常波の状態を既述することができる。
・運動量や位置の場合を例に、演算子の概念を理解し、固有値、固有状態について説明できる。
4週 ・シュレディンガー方程式1 ・群速度、波束の概念を理解できる。
・電子の運動が波動方程式に従うことを理解し、自由電子が従う波動方程式を記述できる。
5週 ・シュレディンガー方程式2 ・ハミルトン演算子の意味を理解し、ポテンシャル中を運動する電子の運動をシュレディンガー方程式によって記述できる。
・時間に依存するシュレディンガー方程式、および時間に依存しないシュレディンガー方程式について説明できる。
6週 ・1次元問題1(1)-井戸型ポテンシャル ・シュレディンガー方程式を1次元問題に適用し、井戸型のポテンシャル中の電子の固有状態を記述できる。
7週 ・1次元問題1(2)-調和振動子 ・シュレディンガー方程式を1次元問題に適用し、調和振動子の固有状態を記述できる。
8週 ・1次元問題2(1)-反射と透過
・シュレディンガー方程式を1次元問題に適用し、電子の反射と透過について記述できる。
2ndQ
9週 ・1次元問題2(2)-トンネル効果 ・電子の反射と透過を応用し、トンネル効果について理解し、説明することができる。
10週 ・球対称ポテンシャル中の電子1 ・シュレディンガー方程式を極座標での3次元問題に適用し、球対称ポテンシャル中の電子の固有状態について記述できる。
11週 ・球対称ポテンシャル中の電子2 ・水素様原子中の電子の波動関数の厳密解について理解し、各量子数の意味を説明できる。
12週 ・量子力学の理論体系1 ・位置、運動量、角運動量を例に、物理量が演算子として表せることを理解できる。
13週 ・量子力学の理論体系2 ・物理量の測定値の理論値が、固有値と確率の積の平均値、すなわち期待値で与えられることを理解し、説明できる。
・ある物理量を測定することで、状態が瞬時に変化する、波の収縮について説明できる。
14週 ・量子力学の理論体系3 ・振動量子の生成消滅演算子について理解し、使うことができる。
・ブラとケットを使って、波動関数の確率振幅を簡潔に表現することができる。
15週 ・半導体量子物性 ・これまで学んできた量子力学を使い、半導体の量子物性を説明できる。
16週 前期末試験 ・これまで学んだ内容について,試験で確認する。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力自然科学物理物理速度と加速度の概念を説明できる。4
平面内を移動する質点の運動を位置ベクトルの変化として扱うことができる。4
物体に作用する力を図示することができる。4
力の合成と分解をすることができる。4
質点にはたらく力のつりあいの問題を解くことができる。4
重力、抗力、張力、圧力について説明できる。4
フックの法則を用いて、弾性力の大きさを求めることができる。4
慣性の法則について説明できる。4
作用と反作用の関係について、具体例を挙げて説明できる。4
運動の法則について説明できる。4
運動方程式を用いた計算ができる。4
仕事と仕事率に関する計算ができる。4
物体の運動エネルギーに関する計算ができる。4
重力による位置エネルギーに関する計算ができる。4
弾性力による位置エネルギーに関する計算ができる。4
力学的エネルギー保存則を様々な物理量の計算に利用できる。4
物体の質量と速度から運動量を求めることができる。4
運動量の差が力積に等しいことを利用して、様々な物理量の計算ができる。4
運動量保存則を様々な物理量の計算に利用できる。4
周期、振動数など単振動を特徴づける諸量を求めることができる。4
単振動における変位、速度、加速度、力の関係を説明できる。4
等速円運動をする物体の速度、角速度、加速度、向心力に関する計算ができる。4
万有引力の法則から物体間にはたらく万有引力を求めることができる.4
万有引力による位置エネルギーに関する計算ができる。4
波動波の振幅、波長、周期、振動数、速さについて説明できる。4
横波と縦波の違いについて説明できる。4
波の重ね合わせの原理について説明できる。4
波の独立性について説明できる。4
2つの波が干渉するとき、互いに強めあう条件と弱めあう条件について計算できる。4
定常波の特徴(節、腹の振動のようすなど)を説明できる。4
波の反射の法則、屈折の法則、および回折について説明できる。4
弦の長さと弦を伝わる波の速さから、弦の固有振動数を求めることができる。4
電気導体と不導体の違いについて、自由電子と関連させて説明できる。4

評価割合

試験課題授業ノート態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合70300000100
基礎的能力5020000070
専門的能力2010000030
分野横断的能力0000000