物理化学

科目基礎情報

学校 秋田工業高等専門学校 開講年度 平成29年度 (2017年度)
授業科目 物理化学
科目番号 0015 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 物質工学科 対象学年 4
開設期 前期 週時間数 2
教科書/教材 量子力学の考え方 砂川重信 著 岩波書店/(参考書)材料科学者のための量子力学入門 志賀正幸著 内田老鶴圃 (参考書)アトキンス 基礎物理化学(上)-分子論的アプローチ- Peter Atkins・Julio de Paula・Ronald Friedman著
担当教員 丸山 耕一

到達目標

1. 古典論における運動エネルギーとポテンシアルエネルギーを数式で表現できる。
2. 古典論が破たんする実験事実とこれを説明するための量子論の確立までの背景を説明できる。 
3. 量子論的粒子の一次元の直線運動や調和振動のエネルギー(固有値)を量子論から説明できる。
4. 固有方程式の固有関数と固有値が観測量を予測できることを3.の例を用いて説明できる。
5. 二次元、三次元の直線運動と回転運動を一次元の運動の波動関数の意味を考えることで類推できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1原子における原子核と電子の相互作用を電磁気学の概念で理解できる。電子の運動エネルギーとポテンシァルエネルギーの数式表現の意味がわかる。電子の運動エネルギーとポテンシァルエネルギーの数式表現の意味がわからない。
評価項目2粒子や光の二重性が実証され量子論が誕生した背景から量子論を概観できる。古典論では説明できない現象を説明するために量子論が必要なことがわかる。古典論では説明できない現象を説明するために量子論が必要なことがわからない。
評価項目3ナノシステムのシュレディンガー方程式の解や固有値問題から量子状態をイメージできる。ナノシステムのシュレディンガー方程式の解や固有値問題を定量的に議論できる。ナノシステムのシュレディンガー方程式の解や固有値問題を定量的に議論できない。
評価項目4波動関数(固有関数)の物理的な意味がわかり、観測量の期待値を量子論から推測できる。波動関数が固有関数である/ない物理量を観測した場合の期待値を計算できる。波動関数が固有関数である/ない物理量を観測した場合の期待値を計算できない。
評価項目5波動関数の意味を考えることで、多次元における粒子の存在様をイメージすることができる。 三次元の直線運動を一次元のそれから類推でき、回転運動における角運動量の量子化ができる。三次元の直線運動を一次元のそれからの類推や、回転運動における角運動量の量子化ができない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
固体の最小単位である原子の構造は、電子のふるまいによって決定される。これを古典論で解釈すると矛盾が生じる。光や電子などの粒子の二重性(粒子性と波動性)を導入する必要が生じた実験事実とその背景を理解し、エネルギー量子などの物理量の量子化を納得すると、物質の微視的な性質から物質工学・材料工学の理解へと接続される。
授業の進め方・方法:
講義形式で行う。演習問題を課題として与える。試験結果の平均点が合格点に達しない場合,再テストを行うことがある。
注意点:
到達度試験の結果を80%,レポート(欠課措置を含む)を20%の比率で評価する。
総合評価 =(到達度試験(前期中間)評価点+到達度試験(前期末)評価点)/2 合格点は60点である。
(授業を受ける前)教科書を閲読し、関係する物理や数学の基礎概念を復習する。
(授業を受けた後)電子などの量子論的な粒子のふるまいは、古典論による記述では限界がある、あるいは矛盾が生じるという意味で、両者の認識を深めるような学習を望む。したがって、式を暗記するのではなく、電子等の挙動をイメージできた上で、それを数学という道具を用いて表現するという、これらのセットによる概念のを理解を心掛ける。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 授業ガイダンス・量子論の領域 授業の進め方と評価の仕方について説明する。量子論の学問領域をを導入する。
2週 静電ポテンシァル 電荷と電荷の相互作用から、電子の挙動を古典論によってイメージできる。
3週 エネルギー量子と、光と粒子の二重性 エネルギーの単位を導入することで、光と粒子の二重性をイメージできる。
4週 電子の発見とエネルギー準位 電子が発見され、エネルギー準位の概念が導入される実験事実を考察できる。
5週 ド・ブロイの箱からボーア理論まで 粒子が波の性質をもち、定常波であることから導かれる、ボーア理論を説明できる。
6週 シュレーディンガー方程式の導出 波動方程式に粒子性を導入した関係式(シュレーディンガー方程式)を導く概念を説明できる。
7週 自由粒子のシュレーディンガー方程式 シュレーディンガー方程式によって記述された量子井戸内の自由粒子の状態を説明できる。
8週 到達度試験(前期中間) 上記項目について学習した内容の理解度を確認する。
2ndQ
9週 量子論の基本原理(1) 自由粒子を例にして、波動関数、固有値方程式の意味を説明できる。
10週 量子論の基本原理(2) (1)にひき続き、オブザーバブルな物理量の期待値等を波動関数を用いて導ける。
11週 量子論の基本原理(3) (2)にひき続き、波動関数の直交性、不確定性原理等、量子論の原理を系統的に説明できる。
12週 調和振動の量子化とトンネル現象 振動現象を量子化し、量子論と古典論での振動の挙動の違いを説明できる。
13週 多次元での並進運動の量子化と縮退 箱型ポテンシァル中の自由粒子のシュレーディンガー方程式とエネルギー状態の縮退を説明できる。
14週 回転運動の量子化 角運動量の量子化と回転粒子の歳差運動を説明できる。
15週 到達度試験(前期末) 上記項目について学習した内容の理解度を確認する。
16週 試験の解説と解答、授業アンケート 到達度試験の解説と解答、本授業のまとめ、および授業アンケート

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週

評価割合

到達度試験レポート合計
総合評価割合8020100
知識の基本的な理解501060
思考・推論・創造への適用力10010
汎用的技能20020
総合的な学習経験と創造的思考力01010